「心苦しいのですが、批判的な立ち場でレビューします。」長いお別れ 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
心苦しいのですが、批判的な立ち場でレビューします。
相性の悪さはどうしようもないということでしょうか。
『湯を沸かすほどの熱い愛』について、
❶黒焦げの遺体が風呂釜に残るであろうこと、死者への尊厳の欠如、愛する母親の遺体がそう扱われたことに無頓着な遺族(死体遺棄という犯罪への加担でもあり、ユーモアとしての許容範囲を超えるのではないか、と個人的には感じています)
❷いじめ被害者や家族への配慮の無さ(下着姿にまでなってわが子、それも女の子が闘うことを望む親がいるのだろうか)
を主な理由として、批判的な立場でレビューしました。
前回、個人的な思い込みが強かったという可能性もあったかもしれないので、今回はなるべく客観的で公平な見方を心掛けて鑑賞したのですが、やはり、ダメでした。
この映画で気になったことを箇条書きすると下記の通りです。
❶原作には無い万引きシーン
認知症の方が実際に起こしてしまう可能性、認知症を口実に犯意を否定する事例。どちらも取材に基づき、本当にあることとして描いたのかもしれません。だとしても、介護してる方の心労やいたたまれなさを想像したら、わざわざ描く必要は無いのではないでしょうか。また、スーパーの店長さんや幹部社員と思われる方の対応もあそこまで悪辣に描くのは日々万引き対策に苦労している現場の人への配慮にも欠けると思います。多くの現場の方はもっと人間的な対応をしているはずです。
❷風評被害への配慮不足
フクシマの事故について、当時外国では放射能漏れの危険性を声高に叫んでいたのは事後の報道で知る限りたぶん事実だと思います。なので、原作では心配のあまり結果的には過剰反応だったことが分かるように書かれていますが、この映画では、セシウムが東京圏でもかなりの警戒レベルだったように受け取られてもおかしくないように描かれていたように思います。風評被害の悪夢(農作物、イジメ、差別的言動など色々な場所で多岐にわたり、発生したと記憶しています)を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう思うと安易な扱いのように思えるのです。
❸今度は遺体ではなく、衰弱した患者への思いやりの無さ
誕生日会の小道具のひとつである星模様の円錐形の帽子。
15センチも動かしたら、人工呼吸の管が外れてしまうかもしれないし、床ずれにも影響するのではないかと心配になりました。勢いあまって他の部位を骨折するかもしれないわけですし、意識があろうがなかろうが、あの奥様がそんな夫の体への思い遣りのない悪ふざけ⁈に近い行為を一緒になって行うことに違和感がありました。
中野監督は総じて、当事者の心持ちや関係者の受け止めようへの想像力よりも自分の技巧的な泣かせの演出の方を優先する方のように見えてしまうのです。
中野監督ファンの皆さまには、一片の違和感もないのでしょうか。
などと書くと感情的に噛み付いてるように見えますが、この映画の良いところもそれなりには分かってるつもりです。ただ、自分の感覚が異常なのかな、とついつい不安になってしまっただけですので、お気になさらないで下さいね。
琥珀さんのレビュー拝見させて頂きました。深く同意です。
申し訳ないですが、
歯に衣着せぬ言い方をさせて頂くと、
この映画、私にはツッコミどころが沢山で疲れました。
いちいち挙げませんが、表現がどこかで見たことある物ばかり。いい映画でしょーと、押し付けられている感じがしました。
No-Bodyさん
コメントありがとうございます。
読み返すと自分の情緒面の未熟さぶりが恥ずかしくなるのですが、その時々の率直な感想の記録として続けさせていただきます。
世間から注目度が高い作品程賛否両論ははっきりと分かれます。
琥珀さんの様な批判的な意見が存在すると言う事は、この作品がそれだけ注目に値する作品である事の裏返しになると思います。
のべつ幕無し状態に褒め上げる作品レビューばかりだと逆に内容を疑いたくなりそうなので(^^;)、今後も自分に素直なレビューを書き続けて下さい。
ojisan48さん
ご助言⁈ご叱責⁈ いや、厚かましく励ましとして受け止めさせていただきますね(^.^)
いずれにせよ、コメントしていただき、ありがとうございます。
こうして色々とご意見を寄せていただきまた新たな考察ができるので、個人的にはとても楽しんでます。私は頭の回転が鈍いので、文章に落としたり、違う意見に触れたりしながら時間をかけないと物事や事象の輪郭とか成り立ちが分からないのです。勿論、本質的なことが理解できるわけではなく、自分の浅い経験や知識の中で一応納得できて理解できる形になるまでは突き止めたい、という生理的欲求に従ってるだけなのですけど。
中野監督の演出にしつこく拘るのは、まさに私の浅い経験と知識の中では未だに理解ができないからだ、とご理解ください(前作の風呂釜での遺体焼却、イジメ被害者女子が下着で闘う、などが中途半端なユーモアと抱き合わせで描かれていたのが、トラウマ的に刻まれてしまったようです)。
人を傷つける目的がある、などとは全く思っておりません。ただ、なんでわざわざそういう演出や仕掛けをするのかが理解できないだけです。
『気遣い完璧な映画』はたぶん存在しないと思います。
映画だろうと文学だろうと、どんな表現であれ、受け止める人によって感じるものは違いますから。
ただ、
とことん寄り添う気持ちで一貫している。
寄り添っているように見えるけれど、誰かが受けるであろう『痛み・傷み』よりも演出効果を優先している。
の違いはあると思っています。
極めて個人的な感覚で言えば、『この世界の片隅に』以降の日本映画を見る際に、製作者サイドの姿勢として、その映画の登場人物やその人たちが象徴する者たち、或いはその時代に生きた方々への思いをどれだけ想像して、どれだけ寄り添っているか、ということがひとつの指標になっていることは間違いありません。
細かい事は気にせずもっと映画を楽しみましょうよ。せっかく1900円も払ったのにもったいないですよ(前売りやレディースデーとかだったらもう少し安いですかね)。そこまで想像力が豊かでしたら監督が表現したかった事を想像して楽しめばいいのにと思いました。人を傷つける目的で演出する監督なんていないと思いますけどね。
むしろ琥珀さんが思う気遣い完璧な映画を教えてほしい。
ゆうすいさん
コメントありがとうございます。
確かに人工呼吸器は延命措置を取るかどうかの議論となって、曜子さんが娘二人に「バカにしないで!」とピシャリと言ってたのでこれから先のことですね。たしか、それをキッカケに蒼井優さんが、やっぱり誕生日会ここでやる!となったのでした。とてもいいシーンなのですよね。
細かいことを言い出したのはそもそも私からなのでとても貴重なご指摘です。
ありがとうございます。
映画のことを言ってるつもりが、実は自分が自制心とか理性を保てない人間であることを晒してたわけで、ホント恥ずかしい話です。ありがとうございます。
私も床ずれは気になりました、もうちょっと優しく!と。
ですが、人工呼吸器を付けるかどうかの相談の時のシーンなので、管は取付られて無かったと思います。
細かい事でごめんなさい。
bloodtrailさん
過分なお言葉、『痛み入る』ばかりです。
痛み入る…居眠り磐音が映画の中で、3〜4回言ってました^_^
本当にありがとうございます。
最近では、『愛がなんだ』は原作へのリスペクト、作り手の誠意と緻密さが両立した素晴らしい映画だったと思います。
琥珀さんへ
琥珀さんの誠実さが窺われる、丁寧なコメントを噛みしめながら読んでます。
丁寧に緻密に積み上げられた感が伝わって来る邦画が、最近減って来てないかなぁ、って感じてます。アジアの中でも埋没し兼ねない現状に対する危機感を感じてる人は居ないのかなぁ、とも。この規模の映画には、そう言う意味での完成度を期待してしまう俺でした。
文章力がないので、開き直って逆ギレしてるみたいなコメントになってしまいましたが、カズさん、kossy kossyさん、bloodtrailさん、くささん、本当に感謝しています。自分が偏屈に陥る怖さを実感できて良かったです。
本当に感謝しています。
寝たきりのかたへの接し方についても仰る通りなのだと思います。
ただ、そこまでの松原さん演じる曜子さんのキャラクターからの繋がりとしては、もう少しそろりと動かす、とか看護師さんを呼んで手伝って貰う、みたいな展開があっても良かったかな、と。
特に湯を沸かすほどの熱い愛と同様、死者や動けない患者への〝ぞんざい〟な扱いがどうしても気になってしまうのです。
原作との比較や前作の内容から引きずったものを先入観として持ったまま、粗探し的にこの作品を観てたようで、恥ずかしい限りです。個人的かつ偏狭な視点、とみなさまのご意見をお聞きして良く分かりました。ありがとうございました。
くささん、ありがとうございます。
確かにそれぞれのエピソードは現実にあり得る内容なのだと思います。
つまるところ、私の違和感は監督の取り上げ方へのやや偏執的な因縁⁈みたいなものかもしれません。
原作にない万引きシーンをわざわざ入れてきて、店長さんのあの決めつけの態度はないんじゃないか。布石として防犯カメラの映像で、奥さんが旦那が取った品物を戻しているシーンがあったのだから、店長さんもそれを見ながら、妻・曜子さんへの同情を示す、とかの展開にしなかったのは何故だろう。と思うのですよね。最後にもーいいよ、というのも優しさというより関わるのが面倒くさくなったからですよね。
ご自分でもおっしゃってるとおり少しずれてるかな、と。
万引きシーンは結局最後は「もういいよ」とうやむやにしてくれて、むしろ私は、あ、優しい人たちだな、と思いました。知り合いがスーパーの店長してますが現実はもっと厳しいようです。生活がかかってますので。
放射能のくだりもまだやさしい描写かなと。うちの会社の東京勤務だった二人は本気で「ここでは子育てできない」と懇願して広島支社に転勤しました。
患者への思いやりのくだりでも、個人的な経験ですが、だいぶ昔私の祖母が寝たきりになったときあんな感じの扱いで思わず、あるある、と笑ってしまいました。家族はあれぐらいの感覚でなければやっていけませんよ。
もう少し世間を知れば違和感無く見られたかもしれませんね。
早速の具体的なご意見ありがとうございます。人ひとりの映画なり読書なりからの情報収集は限界があるし、異なった視点からご教示いただけるのは大変ありがたいことです。あー、判で押したようなつまらない返答ですみません。
もう少しまともに整理できたら、個別にご迷惑をかえりみず、コメントさせていただきます。
琥珀さんへ
琥珀さんの言われてることは判ります。
結局、物語が少し雑になってしまってるんだと思うんです。ストーリーの「核」の部分は素晴らしいんですが、くっ付いている小エピソードが、「あるあるの寄せ集め」みたいな印象です。緻密さの不足。言いたいことは伝わって来るんですが、立て付けが悪いと言うかなんと言うか.....
私の引っ掛かった点は、琥珀さんとは違うんですが、感動したまま劇場を出る、って事にはなりませんでした。蒼井優は良かったんだけどなぁw
風評被害について
雨が降ったら放射能が・・・などという噂はあの年代の方ならしょうがない。
俺が子供のころは、アメリカの原水爆実験とかのニュースがあったら、
必ず傘を持ちなさいとか言われてました。
雨に濡れるとハゲるとか・・・
欧米からの観光客が激減したというのも
今となっては懐かしい社会現象な気がします。
帽子を被っていたのもあの夫婦だけだったという絵が
デマに踊らされていた人たちを象徴していたと感じましたよ。