「中野監督はまたも家族映画の傑作を我々に届けてくれた」長いお別れ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
中野監督はまたも家族映画の傑作を我々に届けてくれた
認知症を患った父との7年間の日々、と書くと、介護日記のようなものと思われるかもしれない。私の印象も最初はそうだった。しかしいざ幕が上がると、そこにはむしろ「私たちの物語」が映し出されていたように思う。描かれるのは7年間だが、ある意味、昭和、平成を超えて新たな時代へと向かおうとする私たちの誰しもに通底するクロニクルが、そこには刻まれていたのではないか。
過ぎ行く季節の中で、忘れてしまうこと、俄かに思い出されること、手では掴めずとも残り香のようになって留まり続けるものもあるかもしれない。私たちはその全てを抱きしめながら、この時を歩んでいく。
鑑賞中、あらゆるシーンと登場人物が愛おしてたまらなくなった。生きること、生きていてくれることが尊く思えるようになった。おそらく俳優陣のとびきりの笑顔と、決して光を失わない明るさがそう思わせるのだろう。中野監督はまたも家族映画の傑作を私達に届けてくれた。
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