劇場公開日 2018年11月10日

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「知性と狂気が拮抗した極彩色のリベンジスリラー」マンディ 地獄のロード・ウォリアー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0知性と狂気が拮抗した極彩色のリベンジスリラー

2019年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1983年シャドウ・マウンテン山麓はクリスタル・レイクのほとりのロッジで静かに暮らしていたマンディとレッド。ある日山道を歩いていたマンディの傍を走り抜けていくバンに乗っていたのは見るからにイカレたヒッピーカルト教団。マンディに惹かれたリーダーのジェレマイアは部下のブラザー・スワンにマンディを連れてくるように命じる。ブラザー・スワンは武装バイクグループ、ブラック・スカルズを召喚しマンディとレッドに襲いかかる。

まずはビックリするのがこれがベルギー映画ということ。ただの血塗れ映画かとナメていましたが冒頭に流れるクリムゾンの『スターレス』、しばらく聴いていると眩暈がしてくるような妖麗なシンセサウンド、悪夢でも見ているかのような極彩色で冷たい照明、もっとハイテンションで狂った映画だと思っていましたが意外とオールドファッション。物語設定と同じ80’sに腐るほど観たC級スリラー群に混じってても違和感のない不気味な佇まいが印象的。

カルト教団との対決というテーマから窺える通り70’sの埃っぽさも濃厚、子供の頃散々テレビ放映されていたのに結局怖くて最後まで観れていない『悪魔の追跡』他のカルトな諸作の面影もあったりして、そういえば子供の頃にはこういう恐怖が身近にゴロゴロ転がっていたなと郷愁も感じたりします。役名の通りレッドゾーンに振り切ったニコラス・ケイジがぶちまける狂気は『フェイス/オフ』に迫る名演であることは間違いないですが、マンディを演じたアンドレア・ライズボローの怪演がそれをはるかに凌駕。一応犠牲者なのに登場人物の誰よりも妖気を漂わせた姿は『キャリー』のシシー・スペイセクを想起させ、これもまた怖くて観れていないテレンス・マリックのデビュー作『地獄の逃避行』と地続きの絶望感にプカプカとも浮かんでいるのかも知れません。

確かに意外と高尚な作品、今は亡き東京タワー内の蝋人形館のような知性と狂気が拮抗した世界観は結構デンジャラス。ご馳走様でした。

よね