「王道ラブロマンス」ゴッズ・オウン・カントリー ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
王道ラブロマンス
私的にはまぎれもないラブロマンスだった。しかも王道。
もはや男性同士というところは一要素でしかない。
しかしジョニー、仕方ないやつすぎる…!
(目をそらしたいことがあれば酒に逃げるし、酔ったら判断力なくなるし、謝れないし基本は仕方のないやつ。ゲオルゲを迎えに行ったとこでは、「ジョン、ちゃんと謝って戻ってほしいと言うのよ!意地っ張りはやめなさい!頑張れ!」と脳内応援上映状態だった。)
そしてゲオルゲ、スパダリすぎる…!
ジョニーを気づかい、ごはんを作り(ジョニーが味付けに不満そうならパスタに塩振って混ぜ混ぜしてあげる)、終止仕方ないジョニーへの包容力がすさまじい。イケメンがすぎる。こんなイケメン、少女マンガかBLマンガでしか見たことないぞ。
そんなラブロマンスなんだけど、ジョニーの成長と救済の物語にもなっているのが良い。
映画冒頭のジョニーはかなり感じも悪いのだけど、何より追いつめられて虚ろな目をしているのが痛々しい。
まだ若く内面も幼いのに、半身不随の父と老齢の祖母と家業の牧場を背負って、一家の大黒柱として働くことを余儀なくされている。
彼には頼れる人も、日々の楽しみもなく行きずりのセックスと酒に溺れて顔色も悪い。そんなジョニーだから彼なりに頑張っているのに、家族は彼を肯定する言葉もかけてくれない。
そこに現れるのがゲオルゲだ。
彼はジョニーを案じていつしか慈しみ愛してくれるようになる。
ジョニーは顔色も良くなり、笑顔も見せるようになり生の喜びとエネルギーを取り戻していく。
たぶん男性だって時には頼れる背中が欲しくなるときがある(私は女だから想像だけど)。
ジョニーがゲイなのもあるけど、たぶん彼は無意識に頼れる背中を求めていて、だからこそジョニーはゲオルゲに惹かれたのだと思う。
そういう意味でこの作品においてはやはりジョニーの相手は男性である必要があったのだ、と思う。
恋って、「あの人の姿が見れて嬉しい」とか「(意中のあの人は)私のことをどう思ってくれてるのかしら」みたいなドキドキも醍醐味だけど、「自分を認めて慈しんだり求めてくれてる人間がいる」という安心感も重要で、ジョニーはゲオルゲに愛されることで、家族にはもらえていなった肯定感を得たんだろうし、それが彼に生きるエネルギーを取り戻させたんだと思う。
そういう意味でも恋っていいよなあ、としみじみ思って観ていた。
あと個人的にグッときたのは、ジョニーのおばあさんが彼がゲイであると気づいてアイロンがけしながら一人で涙するとこ(ジョニー本人には何も言わない)。切ないシーンで泣きそうになった。
あとジョニーとお父さんが自然の中で今後について話し合うとこ。お父さんもジョニーの幸せを願ってゲオルゲとの関係を許した。サラッとしてたけど、感動のシーンだ。
あと「ブロークバック・マウンテン」でも取り入れられてたけど、男性同士のセックスを描く舞台には雄大な自然の中がいいのかもなあと。
街中だと彼らのエネルギーを内包しきれない気がするものね。
本作も割とガッツリセックスシーンがあったけど、スポーツを観るような感覚で、「お、始まったぞ」と観ている自分がいたww ちょっとセックスシーン長すぎだったかな…。