「夢みるロクデナシ」男はつらいよ お帰り 寅さん 夢の彼方さんの映画レビュー(感想・評価)
夢みるロクデナシ
本来の男はつらいよの最後はリリーと寅さんが結婚して終わる予定だったそうですが、渥美さんはそれを拒んだそうな。寅次郎はどっかで野垂れ死にすることを望んだそうです。自分だけ幸せになっちゃいけない、いやね絵に描いたような幸せより、夢を追いかけている時こそが幸せなんじゃないか、そうだろ、オイちゃん。沈みゆく夕暮れのなかで、ポッカリ空いた心でそんな事を語りかけてくるようでした。ビートたけしさん同様、いつまでも売れなかった時代の仲間を想い続ける、そんな優しい、情の深さを感じます。合理化、効率化、スマートに、シュッと、ばかり優先する今の世のなかで昭和という時代は夢みるロクデナシがそこらでウロウロできたいい時代だったのかもしれません。不細工な寅さんが、不相応な美人達にアタックする姿自体が喜劇で、それを許してくれるほのぼのとした時代でした。寅さんはいつまでもバカでダメな、ヘタレな男に寄り添いたい、そんな温かい心の象徴であり続けたことに感謝したい気持ちになれました。なんだが心の汗のような涙がジワッとこぼれてしまう、とても癒される作品です。
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