「こんな寅さん見たくなかった90% やっぱり見に来てよかった200%」男はつらいよ お帰り 寅さん manegerさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな寅さん見たくなかった90% やっぱり見に来てよかった200%
試写会に当たり、今夜、一般公開より一足早く待望の新作を見させていただいたので、そのつとめと思い感想を書きます。
映画の初めの富士山の松竹映画のマークに合わせて、いつもの、♫チヤーン チャラリラチャラ チャララ という音楽もなく、寅さんらしからぬ静かな始まり方に、いつもと違う違和感を感じるところからこの映画は始まりました。
始まってしばらくたって、一番最初の回想シーンからもうだめです。
泣けて泣けて、胸が苦しくなってしまいました。
さくらが博を柴又の駅まで追いかけて、帰ってきて、寅に博との結婚の約束の報告をする第1作の名シーンです。
さくらも博も寅もみんなみんな若くて生き生きとしているシーンを見せつけられた後に、年老いたさくらと博、そして既においちゃんもおばちゃんも仏壇の中の人となり、寅については、その生死については映画の中では語られませんが、見ているこちらは当然に、寅さんはもういないのだなと思ううと、その残酷なまでの現実がに、つらくて見ていられない気持ちとなりました。
ある意味、この映画は全編がこの繰り返しで、寅さんファンであればあるほど、見ているのがつらくなる映画ではないかとも思えます。
思えば私が初めて劇場で寅さん映画を見たのは、中学2年生の夏、第17作の夕焼け小焼けでしたが、そのころには寅さんも性格的に既に温和に丸くなり、いいおじさん化し始めていましたが、まだビデオもなかったあのころ、それ以前の旧作を場末の名画座に探すように見に行った時、手のつけられない、凶暴でわがままな寅さんを見て腹が立ったのを憶えています。
その後寅さんはどんどん丸くなり、満男にとってはいろんな意味で良いおじさんとなっていった辺りが、今回の映画の伏線となっています。
山田監督は最後の何本かの満男シリーズを撮っていたあたりから、今回の映画のような延長線の上にある作品を構想していたのではないのかと思うほどです。
映画を見終わった後、劇場からの帰り道、駅まで歩いている間、まるで大切な人のお通夜の帰り道のような、せつなくて、つらくて、悲しくて、苦しい思いをしながら歩いていました。
こんな思いを、映画を見た後に感じたことがなかったので、これから劇場でこの映画を見ようとしている方たちに、なんと伝えてよいか迷うところですが、タイトルの通り、見たくなかった90%、見に来てよかった200%です。
ある意味今夜は少し興奮しているようなので、少し落ち着いたら、お正月過ぎに、今度はお金を払って、もう一度見てみたいと思います。
きっと、あの年老いたさくらや博が、しばらくぶりに再会した親戚のようにやさしく『2階で良かったら泊まっていけば・・・』と癒してくれるのではないかと思えるのです。