「空気の作り方」華氏119 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
空気の作り方
マイケル・ムーアの作品は、いつも沢山の衝撃を与えてくれるのですが、個人的には今作が今迄の作品の中で一番衝撃的でした。
ミシガン州フリントの水道が、バリバリの新自由主義者であるスナイダー知事と友達のお金持ち連中に乗っ取られてしまった、これはある意味どの国でも起こっていることです。ただそれが新自由主義が吹き荒れた南米ではなくアメリカミシガン州だということ、水道代が高騰するだけではなく鉛が入っていてもずっと放置されていたこと、元の水道に戻すどころか「水は安全」という広告を出してしまうこと。恥ずかしながら、全てこの作品で初めて知ったことです。
私は以前、広告の講習会に参加したことがあって、その時の講義で広告業界の仕事は、「モノ」の宣伝もやるし世の中の「空気」を作り出すこともやると聞きました。世の中の「空気」を作る事を戦略PRというそうです。スナイダー知事の安全PRのシーンをみて私が思い出したのが、講義で聞いた「空気」の作り方と福島です。そういえば最近見た「ESSE」に、福島安全PRの広告が広告主東電で掲載されていたっけな。もしかすると「放射脳」とかいう言葉を作ったのもそのへんの業界だったりして。「政治の話するのタブー」とかいう、先進国ではありえない空気も戦略PR?
いやいや、東電は鼻から私の味方ではないのだけれど、私が最もきつかったのがオバマのパフォーマンスとフリントでのガチな軍事演習です。オバマが私達の味方だって思っていた事自体、広告で刷り込みされていたの??
さらに、民主党の大統領選予備選ではサンダースがいくつかの州で勝利したけど、民主党の「スーパー代議員制度(過激な候補を阻止する制度)」で阻止されたと。なんだか、都知事選の時の宇都宮さんと被らなくもない話ですが、民主党も金持ち優遇策を取らない候補は落とされるってことなんでしょうね。アメリカだけではなく我が国日本の政治もおかしいことだらけ、これっていうのも金持ち連中に仕組まれているのでしょうか⁉︎
広告や戦略PRが巷に溢れている世の中ですが、政治に対して「NO」と言う人達がこの作品には沢山登場します。そう、この作品は魔物も希望も登場するのです。私がとっても嬉しかったのは、行動する女性達や若者達がスクリーンに一杯映し出されていたことです。ここ数年のハリウッド作品で描かれている「勇ましい女性」「男性にとって都合が悪い女性」のリアルな姿が、華氏119には沢山出てきます。落ち込んでいる暇もないくらいの社会になってしまったんだから、行動することくらいしかやることはないというマイケル・ムーアのメッセージと、現実に闘っている人達から、前向きで強い気持ちを受け取りました。皆に観て欲しい作品です。
まっくん a.k.aさん
ありがとうございます。レビューは自分が忘れない様に書いているのですが、他の方のレビューを見るのも凄く好きです。これからもまっくんさんのレビュー見させていただきますね。
ご自分の経験を反映した素晴らしいレビューですね。この機会にミカさんのレビューの履歴を拝見しましたが、実に沢山の作品を観られていてスゴイなあと。私は「映画.com」では新参者ですが、負けないように精進してまいります。