「夢果てたハイカラ武士」峠 最後のサムライ Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
夢果てたハイカラ武士
戊辰戦争
1867年大政奉還を行った
江戸幕府15代将軍徳川慶喜は
なんだかんだ政治運営は
徳川家系列で行うつもり
だったが薩長・尾張・越前らは
王政復古宣言により新政府を名乗り
倒幕キャンペーンを展開
旧幕府軍との開幕戦である
鳥羽伏見の戦いが1868年勃発
旧幕府軍の方が優勢と思われたが
徳川慶喜が急に江戸に引き返し
旧幕府軍は総崩れで敗北
歴史には当たり前のように
出てくるがまさに「勝てば官軍」
の諺通り
士族が治めたる日本が変わるために
必要だった戦いと言えるものの
その後の日本を十分予見し
必要だった有能な人材が失われた
悲劇の戦いでもある
司馬遼太郎はこの幕末に
散っていったものの
主従を果たす武士としての
本懐を遂げた男たちというのに
シンパシーを感じる作品が多い
でどうだったか
全体的な質感はTVドラマスペシャル
っぽいもののキャストが豪華
役所広司も悲劇の主人公を
演じるのが板についてますので
安定していました
主人公河合継之助は
今でいう新潟・越後の長岡藩家老
本人は江戸や西洋文化に広く見識を持ち
幕末で侍の時代は終わることを感じつつ
武士として徳川家への奉公を最後まで
守るという板挟みな状況下で
長岡藩の領民のために
最新鋭の武装を揃え新政府からも
徳川家からも「独立」するという
仰天プランをもっていました
これは映画では触れられませんでしたが
江戸の長岡藩の屋敷を処分し得た資金で
暴落した米を買ってきて蝦夷地で売ったり
為替差益で儲けたりなかなかのやり手だった
ようでそうした中でアメリカ人商人から
武器なども仕入れ西洋式の武力もきちんと
揃えていたようです
作中に出てきたガトリング銃なども
ここで揃えたようです
昨今自衛隊はいらないとか
非武装中立とかお花畑左翼活動家が
日夜〇゛カをまき散らしていますが
こうした「武装中立」といった考えは
スイスが有名です
バ〇は中立国は無抵抗だから
軍隊を持ってないと勘違いしていますが
どことやり合っても侵略されない
強力な武力をもってこそ中立を
宣言できるものなのです
作中ではスイスから影響を
受けてるように描写してましたが
たぶん実際はアメリカの
対外的ないざこざには関わらない
というモンロー宣言(1823年)
から来ているんじゃないかと思います
歴史的な考察はテキトーな映画です
まぁ司馬遼太郎さんなので・・
そのため西軍への上納金も払わずに
いたことで迫ってきていた西軍に
真正面から嘆願書をもって
長岡藩はなんにも関わりませんと
臨みますが
(小千谷談判というやつ)
西軍からすりゃ聞く耳持ちません
まぁそりゃそうか
結局新政府の西軍と
旧幕府側の長岡・会津・米沢・桑名藩は
連合として戦うことになります
これが北越戦争となります
長岡藩は精一杯戦いましたが
戦艦6隻とか引っ張ってきて
新潟湾を埋め尽くすように
大挙する西軍にはかなわず
会津藩に落ち延びるうち
継之助は足に受けた銃撃の傷が
元で亡くなります
色々な意見があるでしょうが
後からならどうとでも言えます
ただ言えるのはその時継之助に
最後まで使えた松蔵に
「俺は禄を貰った以上武士として
死なねばならんがお前は何も
ないから商人になれ」と
言いますがその松蔵は後に
「外山脩造」として大阪に渡り
アサヒビールや阪神電鉄の創業
に関わり幼名の「寅太」から
タイガースと名付けられたと
言われている
つまり元をたどれば河合継之助は
阪神タイガースの生みの親かも
しれないのです(?)
NHKのドキュメントみたいに
クッソわかりやすい作戦地図とか
カンペ読みしてるような
目線が気になる仲代達也さんとか
色々映像的には落ち着かないですが
なかなか見ごたえある作品でした
ただ…
時代劇ってほんと減ってきて
こうした映画としてか
NHKくらいしかやってない
現状を考えると
こうした作品で主役級を張れる
役所さんも仲代さん達こそ
最後のサムライ
かもしれませんね