「「銀杏BOYZ」ファンの為の作品」いちごの唄 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「銀杏BOYZ」ファンの為の作品
小説は未読。ストーリー内容は青春映画といったほろ苦さを込めつつ、最後はトラウマをぬるっと乗り越えるハッピーエンドとなっている。
原作において、主人公があんなに情緒不安定というか、下手をすれば発達障害等の病的演出なのかは分らないが、始終その演技が心をザワつかせる。決して知恵遅れという訳では無いのだろうが、所謂『天衣無縫』、『天真爛漫』、『純真無垢』といった四字熟語をリアルに現わすとするとこういう人なのだという佇まいに、違和感しか感じないのである。勿論フィクションなのだから、ああいう人間を拵えるのも自由なのだが、如何せんそこにリアリティが伴わないので、というより、今まで生きてきた中でああいった人物が周りにいなかったので、そこに感情移入できる要素がまるでないのである。そして、件のバンド及び、峯田和伸氏のファンでも何でもないので、益々思い入れが薄くなる。あの主人公のピュアさを形作るもの、背景等は作品を通じて説明しているのだが、だからといって、ヒロインの出自や、友人の死亡事故等のあまりにも悲しく厳しい立ち位置とのミクスチャーがチグハグなように感じてしまう。例えば、解釈として、あの事故を境に、主人公が精神疾患を発症して、ああいった心身に陥ってしまったという事ならば理解も出来るし、家族の主人公に対する腫れ物を触るような優しさは腑に落ちるのだが、どうも元々の地がああいう変わった人物らしい。というのもプレイバックシーンでの学生時代のやり取りも、やはり同じようなイメージを抱く演出だからであるからだ。
ちょいちょい差し込まれるギャグシーンも、漫画的発想を醸し出しているのだが、それが益々映画の質を貶めているというか、安っぽく思えてしまう。度が過ぎたオーバーリアクションやコミカル、煩いぐらいの表情の変化、それはそのまま演劇で、舞台上で披露する内容なのではと思ってしまうのだが。
東北大震災のシーンが組み込まれていたり、千日紅=ストロベリーフィールズ=ビートルズといった細かいキーワードを散りばめたりと、バンドや楽曲所以のものが数多くあると思う(自分は解らないが)ので、多分ファンの人達は垂涎なのであろう。
別のアプローチで主人公の役作りであったら、別演出であったら、もっとドラマティックさが沸くと思うのは自分だけだろうか・・・ まぁ、或る意味父親譲りの怪演をやってのけた実力の片鱗をみせて貰ったと思ったほうがいいかもしれない。
追伸:カメオ出演しているエレキコミックは、どのシーンに出演していたかご存じの方、是非ともご教示願います。