劇場公開日 2019年10月18日

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「キャストの熱演だけでも一見の価値アリ」楽園(2019) つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キャストの熱演だけでも一見の価値アリ

2025年5月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

キャストが最高で面白かったし、すごく良い映画だったなと思ったのだが、いざレビューを書こうとしたらマイナス面ばかりが浮かんでしまった。
あと少し改善されたら傑作だったかもという残念な気持ちがあるのだと思う。
そこで、良くなかったなと思ったところをあえて書こうと思う。
先にもう一度書いておくが面白かったし良い作品だった。

吉田修一原作の短編を繋いだものらしく、前半と後半で主人公が交代する。それぞれのストーリーに不満はない。
杉咲花演じる紡が前後半を繋ぎ、タイトルにもなっている「楽園」に帰結することになると思うのだが、この楽園がイマイチピンとこない。
さすがに全く意味不明とはならないまでも、もう少し明白なビジョンが欲しかったかなと思う。なるほど、楽園とはこういうことかと気付ける何かが必要だった。
これに関して、そもそも瀬々監督にビジョンがなかったようにも感じた。ただ前半と後半を繋ぐためになんとなく楽園をねじ込んだだけのような。
楽園も楽園ではないところも同じと言い、裏を返せば楽園はないと言う人。楽園を作ろうした人。未来の楽園を託された人。それぞれの楽園はおぼろげで、しかも共通しているものを感じ取れなかった。

自分や自分が属しているグループが上手くいかなかったり、辛いことがあったりした時に、限界集落というただでさえある意味追い込まれた状況にある人たちは、自分たちの輪の中の中心から遠い人を罪人と吊し上げ、コミュニティの安寧を図る。天災を静めるために差し出される生け贄のように。
生け贄に選ばれた人の罪は何か?そんなものはない。ただコミュニティの輪の中心から遠かっただけなのだ。
自分が壊れないために他人を壊す。擁護できることではなくても防衛本能としてその気持ちは理解できる。
こんなことを感じたあとに、柄本さんの口から直接同じようなことが語られてしまう。これはよくない。
一から十まで説明されないと理解できない人が多いのはわかるが、その人たちに迎合してしまっては、ここまで観てきたものはなんだったのか?となってしまう。
面白いジョークがなぜ面白いのか説明するようなカッコ悪さ。どれだけ作品に自信がないのか。
終盤に畳み掛けるように解説シーンが続き、とにかくこれがカッコ悪い。わからない人はこれでもどうせわからないのだから、はじめからそんなものはいらなかった。
特に、紡と藤木のおじいちゃんのラストのやり取りは明らかにないほうがいい蛇足だったと思う。

最後に、悪かったところではなく一つだけ書きたいことを。ちょっとネタバレかもしれない。

物語の中心だったともいえるY字路を左に行った人と右に行った人。左に行った人は死んだ。後戻りできず追い込まれ楽園を夢見て死んだ。
では右の道を行った先に楽園はあるのか?楽園が何なのかわからないが希望があるようなラストは良かった。

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つとみ
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