「生贄」楽園(2019) U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
生贄
思考を巡らさねばならぬ作品。
つまりは、観ただけではよく分からない。「楽園」という題名が意味するトコすら分からない。物語はとある限界集落を舞台に始まる。
で、まぁ、美しい自然はあるものの、醜い人間模様が展開される。
澱んだ泥沼の底のようで、作者には何かとてつもない嫌な想い出でもあるかのようだ。
少女が誘拐された事を起点に物語は始まってはいくのだが…そこはぶっちゃけ杉咲パートであって、佐藤パートは全く関係がない。
佐藤パートが八つ墓村よろしく村人を斬殺するに至るまでも、少女が誘拐されたかからどうだとか、されなかったからどうだの話にはならない。
超絶狭い限界集落で、全員顔見知りのような村で全く重なり合わない2つの話が繰り広げられていく…いやいや、え?それでいいの?
最後は少女が行方不明になったであろう時間帯に主要キャストが前後して登場する。
何をさせたいのだろう?
運命の存在でも示したかったのだろうか?
それとも「台風が来たら桶屋が儲かる」的ななぞかけなのだろうか?
事の発端は誰かが捨てた犬って事になる。
たけしが留まったのも犬だし、善二郎が決定的に疎外されたのも犬だ。
なのだが、別にそこは物語的に面白いっと思う部分ではないと思われる…。
杉咲、佐藤になんとか共通項をと思って見出したのが表題である。
「生贄にされた人々」かなぁと。
多数の人が平穏に暮らす為の生贄。
そのような事は台詞の端々から薄っすらとは感じはするが、これと楽園って題名を結びつけると、なんつうかダークな内容しか考えつかなかったりする。
佐藤さんが目指したのは「楽園」なんだと思う。人の居ない世界的な。
杉咲さんからは犠牲のような側面しか見えてこない。誰かの楽園の為の人柱。彼女の人生は理不尽な事続きだったのだろうと思う。
なんちゅうか、人への嫌悪感というか、集団になった人への嫌悪感に埋め尽くされた作品だった。
楽園ねぇ…。
なんとも捻くれた題名だよなぁ。
つくづく人間ってのは不可解だ。