劇場公開日 2019年10月18日

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「☆☆☆★★★ 原作読了済み。簡単に。 原作は5本の短編集の話。 「...」楽園(2019) 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5☆☆☆★★★ 原作読了済み。簡単に。 原作は5本の短編集の話。 「...

2019年10月25日
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☆☆☆★★★

原作読了済み。簡単に。

原作は5本の短編集の話。

「青田Y字路」

「曼殊姫午睡」

「百家楽餓鬼」

「万屋善次郎」

「白球白蛇伝」

予告編を観て感じたのは。この5本の中から、てっきり「青田Y次路」だけで構成されているのだろうと思っていた。
実は、原作を読みながら感じたのだけれど。原作を読み進めて行くと。(あくまでも個人的な意見として)段々と面白くなって行く気がしていた。
何故 ?この中で「青田Y字路」なのだろう?…と。
寧ろこの監督の作風を考えた時に、「万屋善次郎」こそが1番相応しいのでは?と思っていた。

映画本編は、「青田Y字路」と「万屋善次郎」それに映画オリジナルと言える、紡から見た物語の3っから構成されていた。
文庫本には監督本人のあとがきがあり。監督の言葉をかいつまむと…。原作者吉田修一のフアンと公言し。それらの著書には、地方に住む人の都会に対する憧れや、そこから発生するねじれた行動。また、中央と地方の対立概念。更には、人間の心に潜む差別的な行動原理等を挙げている。
それだけに。佐藤浩市演じる(後に)限界集落の村から差別を受ける善次郎が登場した時に、「ああ、やっぱり!」…と合点がいった次第。

観た印象として。どうやら「青田Y字路」を取っ掛かりとし、人間の引き起こす差別によってもたらされる事件に、監督自身は興味があり。趣きを置いているのだろう…と思われた。
そんな「青田Y字路」や「万屋善次郎」で描かれ起こる事件の背景は。罪の意識の無い人が起こす差別だからこそ根が深い。
人によっては、何の悪ぶるところも無く罪の意識も無い。
だが一方では。(明らかに悪くは無くとも)自分が引き起こしてしまったのでは?…との、罪の意識に苛まれ。粛罪を背負って日々を生きる人も居るのであろう…と。
ちなみに、「万屋善次郎」では、片岡礼子演じる女性は登場しない。
原作で、善次郎に対して優しく接するのは。映画のキャストの中だと、本来ならば吉行実子の筈。
だが、ここに片岡礼子を配した事で。(ほんの少しだが「曼珠姫午睡」の主人公である不倫願望を持ちつつも。最後にはそんな思いを捨てさる女性の、英理子の影をもちらつかせていた。

原作自体が短編だけに。別々の話を挟み込む為に起こるであろう違和感は、原作を読んだ身として。意外にも観ていて、スンナリと観ていられた…とは思う。
(但し、動物に対して人間が行う差別=虐待の論理が薄まってしまっている感は否めないのですが)
「青田Y字路」に「万屋善次郎」は。共にどこか救いのない終わり方だっただけに。映画はオリジナルの紡と広呂の物語を挟み込む事で、なかなかこちらの拙いレビューでは表現仕切れないのですが。どこか【粛罪】に苦しむ苦悩を描きながらも。原作には無い《一縷》の望みを託したラストにより、余韻を伴った締めくくりになっていたと思います。

2019年10月24日 TOHOシネマズ日本橋/スクリーン2

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松井の天井直撃ホームラン