「その世界で迷子」プレイルーム いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
その世界で迷子
何故に今作品を観ようと思った動機は不純である。現役ストリッパーがオムニバスで主演するのだから当然『濡れ場』であろう。なにせ、若林美保という女優の存在さえ知らなかったし、尚且つ世間での知名度も分らない。なので前衛的な方向制なのか、それともガッツリのエログロなのか、いずれにせよ何かしら愉しませてくれるであろうと期待したのである。
短い作品が5本も突っ込まれており、上映後のアフタートークでも、テーマは“セックス”であるというとおり、若林美保が5人の監督と代る代る組んずほぐれつ、まるでプロのSM嬢宜しく、色々な役柄や演技をこなすという体裁である。
内容は確かに変化には富んでいるが、お目当ての『濡れ場』は殆どそのシーンがない。前衛的という訳でもなく、一応ジャンル映画の廉価版というイメージで捉えられる。まるで彼女のプロモーションビデオみたいな感覚なのだ。
その作品群の中で、クローズアップするものとすれば、『熱海の路地の子』(監督:佐々木誠)。
相手役の須森隆文の相変わらずのどぎついルックと怪演っぷりが濃すぎるので比較は難しいのだが、他作品の中で一番この役柄がバランスが良いと思う。台詞らしい台詞が無いのも良い。正直、他作品の台詞回しや役柄は残念ながら素人と言わざるを得ない“大根”だったからだ。多分職業柄であろう、男にセックスアピールできる技術、若しくは才能を持ち得ているからこその魔性的オーラ、まるでサキュバスのような、ファム・ファタールを演じることは彼女にとってはそれほど困難ではない筈だ。ストーリー自体も迷い込んだ路地裏というまるで異世界への転送のような一種のダークファンタジーを演出されていて大人のお伽噺としてのプロットは、使い古されていてもやはり面白い。
ラストの作品の『Floating』は、福島拓哉監督作品であり、個人的に注目してはいたが、題材や展開が良かっただけに、やはり彼女の演技力が悔やまれる。
ただ、全体的には、一体誰に向けた企画なのだろうかと、もしかして観客の年齢層を考慮したら、ストリップファンなのかな?それにしても、贅沢なファンサービスだなw