「作品のトーンに統一感があって素敵」インビジブル 暗殺の旋律を弾く女 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
作品のトーンに統一感があって素敵
予告編を観ていて、「これ面白そう!」と思う事が多々ある。もっと正確に表現すると、「これは私の好み!」と思う時だ。
薄暗がりの中で、虚ろに佇む女性。窓から差し込む町の灯りが壁を照らす。その光の中を落ちていく影。
彼女は窓の方を向いているのに、微動だにしない。表情に驚きもない。
彼女が盲目であること、彼女のすぐそばで事件が起こったこと。2つの事をを一瞬で悟らせる巧みな予告編がとても気に入った。
これ何てタイトルだろう?と思ったところで「インビジブル 暗殺の旋律を弾く女」。
微妙なタイトルだなぁ、と思ったことは否定しない。たまに予告編だけ上出来の映画、というものがあるが、自分の嗅覚を信じれば大体は満足のいく映画を観ることが出来る。
実際、この作品は私好みのサスペンスで素晴らしい出来だったと思う。
冒頭、ピアニストの彼女はサスペンス映画のサントラ収録に参加している。盲目の彼女は点字楽譜の代わりに音源を聴いていて、それが彼女の聴いている音楽なのか、はたまた自分が観ている映画の音楽なのか?混ざりあってしまうような演出が上手い。
所々挟まれる子供時代の記憶や、微妙に引っ掛かりのある行動で、彼女自身が何者なのか?事件と関わってくるのか?気になるとこらだらけのストーリー展開も巧みだ。
上質なサスペンスというのは、何も斬新なストーリーやら衝撃のオチやらが無ければならないものではない。
観ている間、一秒たりとも画面から目を離せないと、かじりつくような感覚がある。
しかもこの作品では、彼女のやりたいこと、そのために必要なことはしっかり描かれていて無理がない。
微妙にB級な邦題より、原題「In Darkness」の方が映画の雰囲気や彼女の境遇とあっていて良かったように思うけど、静かで暗いサスペンスの好きな人にはお薦めの1本だ。