サイレンのレビュー・感想・評価
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津川じじい、襲われる🔪
16分しかないこの映画。 サイレンの使い方、巧妙。 アラブの外人さん、そう来たか😅 津川じじいの疑心暗鬼、面白い。 観せ方上手いなぁ✨ じわじわ来ます。
ホラー映画…ではない。笑 ※ネタバレはまとめて最下部に
タイトルも有名ホラー洋画と同じ「サイレン」だし、映画.comのTOP画がじーちゃんの恐れ戦いてる顔だしで、何やこれホラーか?と思ってしまう人もいるかもしれませんが、全くホラー要素はありません。笑
あらすじ:
団地に一人で住む老人男性の隣の部屋に、アラブ系の男性が引っ越してくる。老人は「怪しいガイジンが来やがった」とばかり、あからさまに男の前でバタンとドアを閉める。男はそれを見送り、大人しく自分の部屋に入っていく。しかし、その後男は包丁を購入し、老人の部屋に押し入ってくる…
……いや、ホラー要素あったわ。笑
髭もじゃの知らん男が家に押し入ってくるとか普通にホラーですね。笑笑
んー、ショート過ぎて何を書いてもストーリーに触れてしまうので、映画の構成についてまずは書いておきます。
見終わった後、というか見始め1分で既に「おぉ、これ良い映画だ」と頷いたくらい、非常に良くできた作品でした。
日にちが前後する映画なのですが(何かが起こったのを見せて、そこから〇〇日前、ここから〇〇日後と表示され何度も行き来する)、頗る記憶力が悪くこのタイプの映画が苦手な自分にも、全く負担に感じませんでした。
何故かというと、まず〇〇日前、○○日後と表示はされますが、それがなくても映像を見ているだけで「あ、これさっきのシーンとその前のシーンの間の出来事だな」「これは昔の出来事だな」とパッと見てわかるようにできているからです。
ミステリみたいに謎解き要素はないため、明確な日付は関係なく、覚えている必要がありません。しかも、登場人物も老人と男だけ!老人と若者だから見分けつかない2人でもないし!イエエエエエイ!!いちいち覚えなくていいというこの心の余裕よ!!
『アベンジャーズ エンドゲーム』の日本ポスターの煽り文句に「日本よ、これが映画だ」とか書いてあったが、ほざけ!!一目で必要な情報がわかって、客に余計なことを気にさせず話に集中させ、最後に何か良いモン見たって気にさせる!!これが映画じゃ!!!(※注 自分は割とマジなアベンジャーズファンです。)
ショートにも関わらず密に詰まったストーリーで退屈させず、それでいて無駄がありません。かつ、急ぎ足・説明不足の感もなく、むしろ時間の余裕すら感じさせる作りでした。15分なのに。15分ですよ!?学校の休み時間に見られるこの長さ!気軽さ!
スタッフロールも短いので全体で17分程度、本編だけなら15分ほどしかありません。短いと思って寝る前に見たのに、結局このレビュー書いてる時間の方がよっぽど長いんですけど…笑
前述の「〇〇日前」が、一面真っ黒の画面に白抜きの字でちっさく表示されるのですが、そこで一旦話の流れが途切れるので、それが良い影響(余裕を感じさせる効果)を与えていた気もします。
これを何度もしつこくやると、ぶつ切りの印象を与え客を苛々させる結果になったと思いますが、タイミングも回数も、絶妙だったと思います。思い返すと、ショートの割にはこの黒幕が結構な頻度で入ってくるんですが、全く気になりませんでした。
何より特徴的なのが、ほとんど無声映画のような作りであること。ほとんど喋らないため、必然的に表情やしぐさで伝えられる俳優の演技力と、撮り方が重要になってきます。これがより一層、観る側に注視させる効果を生んだのではと思います。
テーマもかなりタイトに絞り、何を伝えたいのか、作者の中でハッキリさせてから作ったことが伝わってきます。
長編映画でも多いのが、「詰め込み過ぎ」問題。もちろん短編映画でそれやったらただのアホと思うでしょうが、実際にはこれが多いの何の。というのも、やはり作るからには何か伝えたいことがあるわけで(たまに何ひとつ伝わってこない仰天映画もありますがw)、伝えたいことが多い人は、どうしたって15分だろうが2時間だろうが、あれもこれも入れたくなってしまうんでしょう。
2時間以上の長編なら、メインテーマとサブテーマに分けて2つくらいテーマを入れても詰め込み過ぎに見えないこともありますが、短編では明らかに消化不良です。なので、大抵1つに絞らなければならないし、もっと言えばその中の核だけ取り出す作業になるわけですが、最重要の核だけといっても、重大なテーマであればあるほど、核だけ取り出して描いたところで観る側に通じるか?という不安もあります。
作る側だけが内容を充分理解していて、「ここは最重要じゃないからいらんかな」と削ったところが、観る側には「いや、それこそ入れろよ!」となってしまったり、作る側が「このシーン綺麗だから客にも見せたい」と長く取ったシーンが蛇足で単なる独りよがりになってしまったり。
実際、作る側は映画を撮るにあたり色々調べて、知識があるから頭の中で補えるんだろうけど、観る側はそんなん知らんし、全然何言ってっかわかりませーんみたいな映画になってしまったらしき映画もチラホラあったりして、作る側の苦悩だけがひしひしと伝わってくるようです。
そんなことから、実を言うと「核だけを取り出して描く」というのは、観る側が大体どんな感性を持っているのか、それがわかったうえで、更に自分にしかわからん変なこだわりも捨て、核だけを綺麗に磨き上げて客の前にそっと置く、という結構ストイックで、冷めた目で自分の作品を見ることのできる人にしかできない、だいぶ高度な技なんじゃないかと思うわけです。普通、自分の作品って思い入れがあるから客観的になんて見られませんから。
それを完璧にやってのけたのが今作ではないかなと(前置きなげーなぁ)。
下手な恋愛だの家族とのいざこざだの、いらんもんを絡めずシンプルに仕上げてある分、ラストは正直すぐに読める展開ですが、そこは全く問題ではないと思います。
何日前、と遡っていくので一見謎解きというか、「一体ここで何があったんだろう?」と思わせる作りと錯覚するかもしれませんが、この手法は単に「客に興味を持たせ続けるため」に使っているだけかなと思います。
ちなみにビジュアルでいうと、ほぼじーちゃんと髭もじゃしか出てこないので、まぁ美男美女が見たいために映画見てる人には向きません。笑
歌手のPVとかで「5分で映画1本見た気分!!フオォ!!」って思える人には間違いなくオススメ。
↓↓以下ネタバレ↓↓
本作のテーマは「食わず嫌いしてんじゃねーよ」かなと思います。
言葉の通じない、(不本意にも)テロで有名なアラブ系の男が隣人になったことで老人は犯罪者ではないかと疑うが、それは誤解でしかなかったというのが顛末で、ここから「最近の日本で起きてる日常を描いたんだな」と思う人もいれば「言葉が通じないから問題が起きたんだな」と思う人もいるかもしれません。
でも、最も重要なテーマ、本作の「核」は、「相手を理解しようと本気で努力してるか?」というところではないかと思うのです。
確かに最近の日本で実際に起きていることですし、言葉の壁も重要なファクターに違いありません。しかし、外国人だから、言葉が通じないから、テロのイメージが強い国の人だから…そんなことは上辺の問題でしかなく、本当は「よく知らんけどコイツとは付き合わなくて良いや」「コイツのこと理解できなくても自分は困らないし」「こっちは興味ないのに関わろうとするんじゃねーよ」…こういった自分勝手な拒絶をしていないか?それを相手がどう感じるか考えたことはあるか?これが最も大切なテーマではないかと思います。
老人になると頭が固くなり、人付き合いも億劫になるといいます。言葉の壁もあり、余計に関わる気がなくなるかもしれません。でも、周りを冷静に見てみれば、同じようなことを老若男女関係なく、人種も国も関係なくやっていると気付かされます。
見た目が違えば「あいつだけ変だから仲間外れにされて当然」、見た目が同じなら何かしら中身に落ち度を探し出して「あいつは馬鹿だから仲間外れにされて当然」。自分は相手に興味ないのに話しかけてきたから、冷たい態度取るのは当然。人を不快にさせたんだから攻撃されて当然。
こういった「一見正しいようにも見える」「日常でよく起こっていること」だけど、よくよく考えたらそれ本当に正しいの?と首を傾げたくなるようなことです。
もちろん相手に悪意があったら身を守ることは必要ですし、全ての人と平等に付き合う必要はありません。苦手な人もいて当然だし、距離を置いても良い。
でも、それは本当に相手を知る努力をした結果決めたことなの?という話。
確かによく知らん相手をいちいち知る努力するメリットって何?と訊かれれば、わかりません。知った結果、相手が超絶ムカつく奴だったりするかもしれません。でも、仮に超絶イイ奴だったら、一生涯の親友になり、貴方の人生そのものが変わるかもしれません。
「未来の幸福」は事前にその価値を知ることはできません。手に入って初めて、その幸福がなければ自分はどうなっていたんだろう?と考えることができます。
人は、この「未来の幸福」にあまり価値を置きません。目に見える、確実に手が届きそうなメリットの方が、それをその後どう利用するかまで予測でき、その先の将来の予定も立てやすいからです。
逆に見えてもいないものを手にしようと思えば当然リスクがあります。場合によってはたった1回のチャレンジで人生ドン底になる可能性もあります。
だから普通の人達は、見慣れたもの、見慣れた場所、見慣れた人を好み、必要に駆られない限りそこに新しいものを加えようと積極的に自分から動くような真似はしません。
「今のままでも、別に不幸じゃないし。」でも、実際には「不幸でも気付けないし」が正確な表現かもしれません。世の中を知らなければ、自分が恵まれているかどうかの判断すらできないからです。そして、世の中を知るためには人と付き合うことは必要不可欠です。人が情報を蓄え、遠くへ運ぶからです。
生き永らえるため、というより息をし、心臓を動かすだけのために必要な、最低限のもの以外は拒絶する、そんな生き方をしているのが本作の老人で、困難を乗り越えようとチャレンジし、失敗しても立ち上がり、わかりあう努力をする、そんな理想がアラブ系の男に表れています。
このように見えると、「日本人の頭の固い老人と怪しいガイジンが、言葉の壁を越えて仲良くなる話」以上の、人類全体に向けたかなり重要な意味を持った映画と感じます。
差別を扱った映画とも、アラブ系の現在の不遇の状況を知らせる映画とも、言葉の壁なんて超えようと思えば超えられるよというメッセージ映画とも取れますが、一番の核はそちらなのかなぁと自分は感じました。
ここから老人の人生は、今までと変わっていくんだろうなと感じさせてくれるラストも良かったです。
いつにも増して長いレビューだな。ここまで読んだ方がもしいらしたら、ありがとうございます。申し訳ないです。笑
15分の映画で4500字超えるほど語る奴いんの?笑笑
また面白い短編があったら観たいですが、短編映画ってほとんど宣伝見掛けないので…ていうか宣伝なんてしてる?
今日は初めて短編を見たせいか熱弁振るいました。めんどくせーオタク扱いされそうだな。ドンと来いや。
手軽に見られる長さなので、どこかで見掛けたらぜひ。ていうかYoutubeに無料で上がってた気が。
爽やかなラストなので、いつ見るにもオススメです。
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