「この世界観がお気に召せば…」映画 賭ケグルイ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
この世界観がお気に召せば…
冷静になってしまうと楽しめない。
ギャンブルを主軸とした映画。
『スティング』のような手際の良さとドキドキハラハラの末の爽快感はない。
『賭ケグルイ』の原作漫画でチラ見したような、ギャンブルにおけるドキドキハラハラ、そうか!という展開もない。
それでも、「おもしろい!」と思ってしまうのは、その世界観。
「ありえん!」と思いながらも、百花王学園という、物語世界の王宮を連想させそうなエクステリア・インテリア。
その城主・生徒会長。
その取り巻き。
そこに巣食うう怪物たち。
浜辺美波さんがいい。ころころ変わる表情・テンション。深淵に何かを企んでいるかのような表情。おバカな言動・表情。見つめられたら心奪われそうな表情。
森川葵さんもいい。ヌケタ表情。キリリと進むさま。
矢本悠馬氏もこの世界観を盛り上げてくれる。
全体的にテンションの高い騒がしい中での池田エライザさんの短く抑えた言い回し。
宮沢氷魚氏の佇まい。
とはいえ、これだけの演技ができる役者を揃えるとなると、仕方がないが、森川さんや矢本氏・池田さん・宮沢氏といい、やっぱり”高校生”役はきついよなと思う。
タワマン自治会や社員寮・会社内の人間関係に置き換えたらこの役者でもいいと思うが…。
他のレビューを拝読すると福原遥さんの演技の評価が高いが、私には興ざめ。
脚本のミス、もしくは漫画チラ見程度、ドラマ版未鑑賞だからか、歩火があれほど生徒会長に固執する理由・背景が見えてこない。だから、歩火の大仰な演技がかえって空々しい。もっと別の動機づけにすればよかったのに。
ギャンブル自体も面白くないし、
鈴井が借金背負わなくてよかった顛末って、あれってありなの?
アンチ組が票を入札してという展開も、主義主張グダグダ…。
あのどんでん返しには萎えた。
かつ、鈴井は借金から逃れたらしいが、夢子は「ミケ」の札下げているって…。このギャンブル以前に荒稼ぎしていたお金はどこに行ったの?
そのあとの村雨の”願い”はよかったけれど。
でも、この豪奢さで、そもそも女子が多い生徒会が仕切っている学園のスイーツが今一つなんて…。オチのためのオチにしか見えない。
と、脚本は、ご都合主義に徹していて、書き直しを求めたい。
そもそも、「ミケ・ポチ」になった生徒たちはなぜ退学しないで、あの学園にしがみつくの?
等、漫画未読・ドラマ未鑑賞ゆえの?疑問が頭をかすめてしまうと楽しめない。
そのような細かいことは忘れて、役者の吹っ切れたコントのような演技と、
作り込まれた美術・雰囲気を楽しむ映画。
カジノ・麻雀の大勝負のような緊張感も静けさもない。
競馬場・競輪場・ボートレース場・パチンコのような騒がしさ。
その雰囲気に当てられて退場したくなりたくも、
この映画ではまだ活躍のない生徒会役員たちが、どんな動きをするのだろうとそれも気になって、次作も観てしまうんだろうな。