「懐かしい悩めるヒーロー像」スパイダーマン ファー・フロム・ホーム みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
懐かしい悩めるヒーロー像
待ってました!これがスパイダーマンだよ!そう心の中で何回も叫んでしまった。2002年にサムライミ監督作品としてスタートしたスパイダーマンシリーズは欠かさず鑑賞している。人間性を浮き彫りにしたヒーロー像が好きだからである。本作は原点回帰した感があり、らしいスパイダーマンを堪能できた。
本作の舞台は、アベンジャーズ/エンドゲーム以降のアメリカ。高校生活を送っていたスパイダーマン・ピーターパーカー(トム・ホランド)達は、夏休みにヨーロッパ旅行に行くことになる。ピーターは、旅行中に長年想ってきたMJ(ゼンデイヤ)との接近を計画していた。しかし、旅先で新たなる強敵が出現し、スパイダーマンとして戦うことになる。そこには、予想外の展開が待ち受けていた・・・。
本作は、ピーター達のヨーロッパ旅行に絞って、ストーリーが展開されていく。登場するヒーローはスパイダーマン中心なので、ヒーロー勢揃いが多い最近品にくらべ、シンプルで分かり易い。その分、ピーターの心情を丁寧に描写し、青春期にあるピータ-のヒーローとして、そして青年としての人間ドラマに仕上げている。
また、スパイダーマンと強敵との戦いの中に、MJとの恋愛模様も巧みに織り交ぜている。不器用な二人の想いがすれ違いを繰り返しながら、徐々に接近していくプロセスは、青春ラブストーリーのようであり、殺伐になりがちな作品に彩りを添えている。
最先端CG技術を駆使した強敵達との戦いは、迫力十分であり、何より、スパイダーマンらしい蜘蛛の糸を巧みに使った空中戦は独特のスピード感があり爽快。ただし、彼の戦いは常に接戦であり、満身創痍で戦う姿が生々しく人間性を感じる。更に、今回は、虚々実々の心理戦があるが、そこで苦闘しながらも必死で戦う彼の姿にヒーローとしての覚悟を感じた。
本作は、ピーターのヒーローとして、そして、青年としての人間性を浮き彫りにした人間ドラマである。
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