「絶対絶命でんぢゃらすばーさん。 まさかジェームズ・キャメロン=漫⭐︎画太郎だった、のか…!?」ターミネーター ニュー・フェイト たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
絶対絶命でんぢゃらすばーさん。 まさかジェームズ・キャメロン=漫⭐︎画太郎だった、のか…!?
未来から送り込まれる殺人アンドロイド「ターミネーター」との戦いを描いたSFアクション『ターミネーター』シリーズの第6作にして、『3』(2003)から第5作『新起動/ジェニシス』(2015)までの作品とはタイムラインの異なる、『2』(1991)の正当な続編。
コナー母子とT-800がスカイネットの誕生を阻止してから25年。身体を機械で改造した強化兵士グレースは、メキシコシティで暮らす女性ダニー・ラモスを守るため未来から送り込まれる。ダニーの命を狙う新型のターミネーター「Rev-9」を相手に懸命に戦うも窮地に追い込まれるグレース。絶体絶命の彼女たちの前に現れたのは…。
○キャスト
T-800…アーノルド・シュワルツェネッガー。
ジョン・コナー…エドワード・ファーロング。
製作/原案はジェームズ・キャメロン。
不朽の名作『ターミネーター2』から28年。遂に創造主ジェームズ・キャメロンがシリーズに帰ってきた!
『2』の結末を否定した『3』、崩壊後の未来を描いた『4』(2009)、一応のリブート作『ジェニシス』、そういや『サラ・コナー クロニクルズ』(2008-2009)なんてテレビシリーズもあったっけ。まぁとにかく、なんだかなぁ…な続編を連発し続けてきた『ターミネーター』だが、ようやく文句なしの傑作が誕生!!…と思っていたのに🌀
本作は製作費約1億9,000万ドルに対し興行収入が約2億6,000万ドルという非常に厳しい結果となってしまった。これは『1』(1984)の7,800万ドルに次ぐシリーズワースト2の記録なのだが、『1』は640万ドルという低予算で作られたB級映画だった訳で、比率ではシリーズNo.1の大ヒット作なのだという点を忘れてはならない。
まさか原作者が手掛けた作品がシリーズ最大の大コケ映画になるどころか、「史上最も興行的に失敗した映画」の一つとしてそのリストに名前が刻まれる、記録的惨敗作になるとは誰も思いもしなかったのではないだろうか。一体何故こんな事に…。
公式が「『T2』の正当な続編」と謳っているのは、キャメロンが自身の関与していない続編群を全て無かった事にしてしまったから。この思い切り…というか切り捨て方は凄い。『新起動』に「期待を遥かに超える大どんでん返し。必見の作品だ‼︎」とかいうメッセージを寄稿していたのはどこの誰でしたっけ…?
まぁ確かに捨てて惜しいものでもないが、それでも今までシリーズを見続けてきたファンもいる訳で、それを無視してしまうというのはちょっとどうなの?と思ってしまう。大体、一からリブートするならともかく、物語の途中部分をターミネートするなんてそんなん漫☆画太郎のクソ漫画でしか見た事ねーぞ。…まさか漫☆画太郎の正体はジェームズ・キャメロンだった…のか!?
肝心の内容といえば……まぁ無難。
『1』と『2』を合体させたようなストーリーで目新しさはないが、勝手知ったるおふくろの味的な親しみがあり、『ターミネーター』を観ているという満足感は味わう事が出来た。
今作でカイル・リース的ポジションを務めるグレースは、サイバネティックス技術で改造されたサイボーグ兵士である。ターミネーターほどには強くはないが、それでも常人を凌ぐ身体能力を活かしてダニーを守る彼女のガッツには心動かされるものがある。
グレースを演じるマッケンジー・デイヴィスの、中性的な美しさこそが本作最大の見どころの一つ。しなやかに伸びた肢体が繰り出す数々のアクションは力強さと優雅さを兼ね備えており、過去作でシュワちゃんが見せていたようなパワー100%な豪快さはないもののこれはこれでありだと思わせてくれる。チェーンを鎖鎌のように振り回す彼女に、女宍戸梅軒の称号を贈呈したい。
グレースが性格、ルックス共に『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)の草薙素子を彷彿とさせるキャラクターだったのは押井守ファンであるキャメロンの趣味か。実写版(2017)で実際に素子を演じたのはスカーレット・ヨハンソンであり、彼女のムチムチな肉体は全く素子には相応しく無かった訳だが、デイヴィスの四肢の長さとクールな眼差しはまさに素子そのもの。彼女を主演にした『攻殻』の実写版なら観てみたい。キャメロンさん、ちょっとこれ考えといて下さい!
新キャラクターのグレースは素晴らしかったが、忘れてはならないのはもちろんこの人、サラ・コナー!『T2』以来、28年ぶりにシリーズに復帰したリンダ・ハミルトンが彼女を再び演じます♪ヤッター🙌
サラ・コナー=リンダ・ハミルトン、リンダ・ハミルトン=サラ・コナーという程のハマり役ではありますが、とはいえ撮影当時のリンダの年齢は62歳。流石にもう激しいアクションは厳しいか…と疑っていたが、それはとんでもない杞憂だった。バキバキに仕上げられた肉体は28年前となんら変わっておらず、まぁとにかくエネルギッシュ。ティアドロップ型のサングラスとロケットランチャーがこんなに似合う60代女性がこれまで存在していただろうか。でんぢゃらすばーさんと呼ぶに相応しい彼女の暴れっぷり、それを観る事が出来たというだけでも、本作が生み出された意味は十分にあったと言えるだろう。
肉体アクションはグレースが、銃火器アクションはサラ・コナーが担当。そして真打ち、T-800が何をするのかと言うとっ!……何かしたっけ?
何だかんだでシリーズに出続けている功労者、シュワルツェネッガーにこんな事を言うのは心苦しいが、本作のシュワちゃんはマジで居る意味ない。
マッケンジー・デイヴィス&リンダ・ハミルトンの女性コンビが凄まじい肉体を作り上げていたのに対し、シュワちゃんはもう完全にただのお爺さん👴アクションにキレがないのは仕方ないにしても、歩き方までお年寄りのそれだったのは流石にちょっとショックだった。ロボットなのにお爺ちゃん…CYBORGじいちゃんG…。
ハッキリ言って今回のシュワちゃんの登場はただのお約束であり、それ以上でも以下でもない。物語的に出てこなくても何ら問題はなく、画面的にもダニー、グレース、サラ・コナーの3人だけの方がスッキリとしていて収まりが良い。
「シュワちゃんが出ないターミネーターなんてターミネーターじゃない!」という意見もわかるし、出演しなかったらそれはそれで寂しさも感じるだろうが、もうお爺さんにアクションは無理なのよ…。出演させるなら、せめてダニーに助言を与えるゲストキャラくらいに留めておいて欲しい。シュワちゃん、Please go back!!
いつも通りの無難な内容だった事に文句はないが、脚本にはめちゃくちゃ不満がある。
まず、誰もが引っ掛かるであろうジョン・コナーの死。冒頭3分くらいでいきなり死んだっ!『T2』の苦労は何だったの!?
この過去作の重要キャラを冒頭で殺しちゃう展開、どっかで観たと思ったらあれだ、『エイリアン3』(1992)だ。キャメロンが監督した『エイリアン2』(1986)の結末を、いきなりひっくり返した『3』。このちゃぶ台返しは今でも語られる程の炎上案件なのに、何故それと同じ様な事をやられた本人がやってしまうっ?そんなんだから大コケするんだぞ。
まま、ええわ。ジョンを殺したのは許したる。でも、その殺した張本人が仲間になるってのはどういう了見だえぇーー!!
このT-800、通称カールのキャラクター像は本当にめちゃくちゃ。まず、ターゲット抹殺を完了したターミネーターが人間として普通に家庭生活を営んでいるという点からして「正気か!?」とツッコミたくなるが、そのあとが更に酷い。ジョンを失ったサラ・コナーに生きる意味を見出してもらう為、彼女にターミネーターの出現ポイントを教え続けていたとかいう意味不明な事を言い出す。それでサラも死んだらどうするつもりだったんだ!?お前が倒しに行けお前がっ!!
末期の言葉の「ジョンのために…」も、「お前が言うなお前が!」という感想しか湧いてこないお粗末なもの。第一、ここでカールが荘厳な感じで死んじゃったが故に、その直前のグレースの自己犠牲が完全に薄まってしまっている。もうお前はいいから!グレースを映せグレースを!!
息子の仇と肩を並べてRev-9と戦ったサラ・コナーの心の広さには、聖母マリアもさぞや驚く事だろう。これカールの頭吹っ飛ばして「じゃ、私家帰るんで」と去っていってしまっても誰も咎めないし、むしろその方が自然とさえ言える。ダニーを殺そうとしているターミネーターより、既にジョンを殺しているカールに観客のヘイトが向くのは当然の事。何故これを良しとしたのか、もしキャメロンに会ったら小一時間は問い詰めたい。
アクション映画としても勢いに欠ける。
前半、Rev-9からの逃走、そして満を持してのサラ・コナー登場までは文句無しに素晴らしかったが、その後グレースがオーバーヒートしてしなしなになってしまう辺りから急激にテンポダウン。途中、不法移民収容所で一悶着はあるものの、その後もまたカールのお家でまったりしたりして、とにかく逃走劇に全然緊張感がない。
また、Rev-9を倒す為にはパルス兵器が必要だ、からの「それ知り合いが持ってるわ。ちょっと貸してもらうね」というあまりにも観客をバカにしたご都合主義展開は噴飯物の一語に尽きる。その軍人さんは何者!?サラは世間的には1級テロリストなんだぞ!?しかも結局その兵器は壊れて使えなかったんだから、じゃあもうそのやり取り丸々カットで良くね?
国境越えシークエンスなんかもそうなんだが、この映画こういう水増し展開がやたらと多い。確かに、プロットとしては殺人マシンからの逃走劇というシンプルなものなので、これで129分の尺を埋めるのはなかなか大変だろうとは思う。だったらもっと短く、シンプルに刈り込め!カールが登場しなければ『1』の108分くらいまでは余裕で短く出来たはず。やっぱ今回シュワちゃん要らんわぁ…。
『ターミネーター』を観ーたー、という満足感は味わえたが、いちSFアクション映画としてはイマイチ。聞くところによると、本作の監督ティム・ミラーは作品の方向性についてキャメロンとかなり揉めていたのだそう。やはり船頭が多くなるとターミネーターも山に上ってしまうのだ。
本来、本作を皮切りに新3部作が新機動するはずだった『ターミネーター』シリーズ。記録的大コケによりもちろんその話は無くなってしまったが、一応まだリメイクなどでシリーズを存続していく意思はある様だ。新作制作の際は、シュワちゃんはもう良いのでリンダ・ハミルトンは残して欲しい。彼女の演じるサラ・コナーがこの1作だけで打ち止めなんて勿体なさすぎるだろ〜😭
※キャメロンもリンダも28年ぶりのシリーズ復帰と書いたが、実は『T2』と本作の間に、ひとつだけ彼らが共に作った作品がある。それがユニバーサル・スタジオのアトラクション『ターミネーター 2:3-D』(1996)である。かつてはUSJにもあったので、体験した事がある方も多いだろう。これこそが本当の『2』の正当続編といった内容で、キャメロン、シュワルツェネッガー、リンダ、エドワード・ファーロングが揃い踏みしたファン感涙のアトラクションだった。しかし、今やこのアトラクションは世界中のユニバーサル・スタジオから消えてしまい、USJのものも2020年に閉鎖されてしまった。今や人々の思い出の中に生きるのみである。
ちなみに、その跡地で今何をやっているのかというと、『名探偵コナン 4-D ライブ・ショー』(2024)である。…もう一度言おう。『名探偵コナン 4-D ライブ・ショー』である。
…あー、『コナン』には別に何の恨みもないが、いくら何でも今のUSJは節操なさすぎませんかね?金になりゃあ何でも良いのか?