劇場公開日 2019年11月8日

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「エンドレス化してしまった世界観」ターミネーター ニュー・フェイト アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンドレス化してしまった世界観

2019年11月10日
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鑑賞方法:映画館

興奮

2D 字幕版を鑑賞。ターミネーターシリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが手掛けた「2」の正統な続編という触れ込みで非常に期待して見に行った。これまでの流れをざっとおさらいすると以下のようになる。

「ターミネーター(1984)」と「ターミネーター2(1991)」は、監督を含めてほぼ同じスタッフで製作されたこともあり、相互に設定の矛盾などはなく、キャストもほぼ共通している。7年という間隔は、当時の映画製作のスピードから言って普通だったと思われる。スカイネットが崩壊して未来が改変されたため、人類の恐怖は去っており、話が完結していた。ジョンとサラが命を狙われる理由も消滅したはずであった。

「ターミネーター3(2003)」は、前作から 12 年も経過しての製作や、監督変更に加え、「2」でジョン役だったキャストの薬物問題などもあり、多くのキャストが変更されているが、あれほど精悍だったジョンが猿のような男に変わっていたのには唖然とさせられた。ジョンの年齢と「審判の日」の日付が変わっている。パロディのようなシーンばかりが目について全く納得できない作品であった。

「ターミネーター4(2009)」は、前作からさらに監督やキャストが変わっているが、「審判の日」の年代やジョンの妻などの設定は、「3」のものを継承していた。しかし、物語上の「3」との繋がりはほとんどなく、清々した思いがした。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015)」は、シリーズのリブートであり、「1」のストーリーをもとに「2」の設定を足した内容となっているが、いかにネタ切れを紛らすためとはいえ、シリーズ全体の物語の根幹を揺るがすような展開がなされており、全く容認できない話になっていた。記憶から抹消したいほどの作品というのは「スターウォーズ Ep.8」に匹敵する許し難さであった。

第1作は非常に低予算で作られ、時代的にも初代の Macintosh が発売された頃であったため、骨組みだけになったターミネーターはコマ撮りがミエミエという状態であったが、話のクォリティは非常に高く、大ヒットしたために続編はかなりの予算を使って撮影された。発想はキャメロン監督がうなされた悪夢が下地になっていて、メタリックな骸骨が地中から現れて人間を殺しまくるというものだったらしい。

さて、本作は「2」の正統な続編というだけあって、「3」以降の話とは全く無関係であるというのが非常に痛快であった。これが許されるなら、是非「スターウォーズ Ep.8」もゼロから作り直して欲しいと願いたくなるほどである。ただ、スカイネットが消滅して「審判の日」も避けられたという未来での続編はあり得るのかと懸念していたら、「リージョン」という AI が覚醒して人類を襲い始めるというパラレルワールドの話になっていた。これでは、いくらでも続編が作れてしまうので、却って収拾がつかなくなってしまうのではという思いがした。

まずは、その未来を変えるべく新たに未来から送られて来るものによって現代が大混乱に陥るという話が起点になっていて、そのために、あれほど苦労して「2」で救出された少年ジョンを CG でわざわざ蘇らせて悲惨な目に遭わせるというやり方は、「エイリアン3」の冒頭を彷彿とさせる脱力感があった。

未来のリーダーを抹殺しようとする新型のターミネーターと、それを阻止するために送られて来たもう一体という構図からその後の展開まで、ほぼ「2」の焼き直しであり、ターミネーターの性能が違うために戦い方が違うというだけの話になってしまっていた。それに協力するのがサラとシュワなのだが、この2人にはそもそも協力すべきモチベーションはないはずで、無理やり巻き込んでいる感が痛々しかった。シュワが演じた T-800 が何故老けたのかの説明もなかったが、目的を果たしたターミネーターがその後何をして過ごすのかという着眼点は面白いと思った。

音楽担当はこれまで全シリーズ担当していたブラッド・フィーデルから別の人になっていて曲風もガラッと変わっていたので驚いた。フィーデルはまだ 60 代で存命なはずだが、いかなる理由によるものであろうか。あの特徴的なリズムとメロディーが終盤になってやっと聴こえて来たのだが、それまでの部分が非常に雰囲気を損なっていたと思う。新たな担当者は独自性を出そうとしていたのだろうが、見に来ている人のどれほどがあのテーマ曲なしでターミネーターを感じられるか非常に疑問である。

アクション映画としての出来は非常に高いと思ったが、世界観がカオス化してしまったのが非常に気に掛かった。これは「ジェニシス」と別な意味でシリーズを台無しにしてしまったのではないかという思いが拭い切れない。
(映像5+脚本3+役者4+音楽4+演出5)×4= 84 点。

アラ古希