劇場公開日 2021年3月5日

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「物語のわかりやすさよりカッコ良さが大事」太陽は動かない つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0物語のわかりやすさよりカッコ良さが大事

2025年6月12日
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鑑賞方法:映画館

期待値からすると、ちょっと残念だったなぁ。
予告とかカッコいいし、藤原竜也だし、竹内涼真とのバディも魅力的だし、この見終わった後の「おっふ」感はなぜ生まれたのか。
なんで、オープニングからちょっと振り返ってみたいね。

時代を感じさせるアスペクト比の「AN通信」誕生から始まって、ブルガリアでのファーストアクション。
ここのアクションは良かったよね。まず、ムキムキ・レザージャケットの山下(市原隼人)が良かった!拷問されて悶えてるだけだけど、良かった。
山下を助けるため突入した鷹野(藤原竜也)の一連のアクションも、最近流行りの痛い系リアル路線。狭い室内、その場にあるものを小道具に使う流れは、キアヌやステイサム君あたりが得意とする近接アクションだね。
あえて言うなら、中国系の裏工作部隊だとわかるように、チャーハンつかんで食べて欲しかったなあ。チョウ・ユンファみたいに。惜しい。
まぁ、オープニングとしては中々だったんじゃないかな。

で、この後一進一退の諜報戦と回想が織り込まれる本編に突入するわけだけども。
この本筋と回想のバランスが、スゴく悪い。
回想が映画作品全体に占める役割として、「名もなき世界のエンドロール」あたりは回想こそ本編、だから長くても良い。
でもこれは鷹野の掘り下げでしょう。本編に絡む要素はほんのちょっと。それにしては長いし、過去と現在がシンクロする構成は面白いと思うけど、疾走感を邪魔してるよね。せっかくのアクション映画なのに、テンポが悪くなる。
しかも肝心の鷹野の心のうちを、風間(佐藤浩市)が全部説明しちゃうのも、説明過多で不満なんだよ。それがわからないなら回想意味ないよ!

本編のアクションも、ほぼスタント無しで挑んだにもかかわらず、魅せ方がパッとしない。「リアリティ重視」と言えば聞こえは良いけど、決定的瞬間に「何が起きたかわからん!」という消化不良感が凄い。そこは無駄にスーパースローにするべきなんだよ。見せ場なんだから。
インド映画はそのへん良くわかってるよね。何てことないシーンでスーパースロー使って、やたらカッコいいもんね。
折角体張った俳優陣には「御愁傷様」としか言い様がない。

思ってたよりも素晴らしかったのは、田岡役の竹内涼真だな。演じてる竹内涼真を観たことがなくて、はっきり言って未知数だったのもあるけど、冷静な鷹野の横で感情を隠せない田岡、っていうコントラストも良かった。
田岡単体のアクションも演技も良かった。役に向けた肉体作りも良かった。良かった、しか言ってないな。

アクション映画として及第点くらいはあるものの、これを誉めちゃうと、じゃあ「アトミック・ブロンド」とか「るろうに剣心」とか、アクション専門みたいな俳優がアクションしてないのに、本当に「アクションすげー!!」っていう映画の立つ瀬が無いじゃない?
アクションの「魅せ方」っていう意味では同じく藤原竜也主演の「Diner」の方が脳裏にこびりついて離れなかったよ。

蛇足かもしれないけど、タイトル出しのタイミングも良くなかったな。「007」的な内容だし、「007」的なオープニングだったんだから、ファーストアクション→キャスト一覧→AN通信誕生をサブリミナル的に(MARVELっぽく)→「太陽は動かない」(ドーン!)の方が良かったんじゃなかろうか。

私の評価は辛いけど、初めての映画デートにはうってつけ。話すことはいっぱいあるだろう(肉体美とか、アクションのこととか、俳優のこととか、ブルガリアロケとか)。
こんな映画を、もうちょっと面白くコンスタントに作って、中高生の時に観て「映画面白いな!」ってなって、映画愛好家が増えるといいな。

つとみ
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