「全く期待していなかったのに思いがけず楽しめて点が甘くなっているかも知れないが、巧みな脚本、堅実な演出、魅力的なキャストで日本製娯楽映画の佳作と言って良いだろう。」太陽は動かない もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
全く期待していなかったのに思いがけず楽しめて点が甘くなっているかも知れないが、巧みな脚本、堅実な演出、魅力的なキャストで日本製娯楽映画の佳作と言って良いだろう。
(原作既読)①原作のエージェント鷹野シリーズは吉田修一の小説のなかでは凡作に近いし(「森は知っている」が一番出来が良いくらい)、原作の鷹野のイメージがどうしてもカルメ焼き顔の藤原竜也と合わないので、失敗作になるだろうと予想して観に行ったところ…②先ずは冒頭からぶれずだれない安定した演出に驚いた(途中ちょっとだれるけど)。それから、「太陽は動かない」と「森は知っている」とをうまくミックスし且つシンクロさせている脚本にも感心(後半「ウォーターゲーム」もちょっと入ってます)。原作に忠実ではない脚色も多いが却ってそれが良かったのかも知れない。ただ、小田部教授とその娘に関するエピソードが描写不足で食い足りない。盛り込み過ぎてそこまで手が回らなかったか。③原作のイメージに合わないと思っていた藤原竜也も観ているうちに違和感が無くなってしまった。やはり力のある役者だと思う(好きか嫌いかは別にして)。竹内涼真は、初見だが、私生活では色々言われているようだが(最近の俳優は昔の俳優と違って、私生活のことですぐあれこれ言われるので可哀想)、甘いマスクといい、恵まれた体躯といい、切れの良いアクションといい、演技も下手ではないようだし有望な若手俳優だと思うけど。④AYAKO役を日本人女優ではなくハン・ヒョジュにしたのは良いキャスティングだと思う。お陰で映画に幅が出た。凄腕の産業スパイとしては少し可愛すぎるけど。⑤私と同世代の俳優達(佐藤浩市、鶴見辰吾、宮崎美子)は揃って好演。特に宮崎美子は、短い出番ながら、幼い息子が誘拐され行方不明になってしまって以来心の傷を抱え続ける母親をオムライスを通じて造形して哀切。すっかり安定した演技力のある女優となった。