「ケツ、ケツ、ケツ・・・ダァーッ!」太陽は動かない kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ケツ、ケツ、ケツ・・・ダァーッ!
次世代エネルギーを担う中国の巨大企業CNOXと日本の蓄電技術が提携されようとしていたが、その電機メーカーMETの取締役・河上満太郎(鶴見辰吾)に接触していた山下がブルガリアで何者かに殺されてしまう。後を引き継いだ鷹野と田岡は山下が遺した写真を頼りに世界各国で活躍するというもの。
パーティで出会った謎の美女AYAKO(ハン・ヒョジュ)や宿命のライバルであるデイビッド・キム(ピョン・ヨハン)など、国際色も豊かではあるが、欧米人はほぼ出演していないとこも特徴のひとつか。エネルギー問題の利権を狙う巨大企業の問題提起や、裏で暗躍する産業スパイたち。AN通信という謎の組織でさえ、使い捨てのエージェントやボスであると思われた人物も実は操り人形だったことなど、スパイ映画としての邦画の奮闘ぶりも素晴らしい。
ただ、主要人物と敵対組織がなかなか把握できないでいるし、謎も残されたまま。それでも鷹野の高校時代の映像がノスタルジックに描かれ、現在のシーンにオーバーラップさせるところは面白い。特に友人・柳(加藤清史郎)とその弟、詩織(南沙良)との恋の行方などは最後まで重要なポイント。また、デイビッド・キムとは一体?と続編への期待も高まってくる。最重要ワードは“ケツ”だ!
一日生きることだけ考えろ。こういう生き方をすると、人間どうなってしまうんだろう。詩織にとってはいい言葉だったけど、エージェントとしては生きる目標さえなくなってしまうのでは?虐待を受けてきた子どもたちというテーマ性もあるし、彼らの生きる支えになっているのかもしれません。そんなこんなで、一番魅力を感じたのはハン・ヒョジュだったなぁ~峰不二子みたいな存在。
wowowドラマ版では、政治家の陰謀による東京都市博候補地爆発事件。西東京湾に決まったのに石橋蓮司演ずる議員が利権のために湾岸に移したいがためにテロによる爆破事件を装ったもの。しかし、実際には都市博跡地にIR法が可決されたことによりカジノを誘致する思惑があったのだ。日本の暴力団、香港のドンみたいな殺し屋グループも絡んできて、AN通信がその情報を得ようとするストーリーだ。
新人田岡を預かる鷹田も元は桜井(安藤政信)の弟分としてバディを組んでいたが、桜井は8年前に爆死したと思われていたのに実は生きていたという核の部分と、NPO法人に勤める多部未華子が過去に自殺しようとしたところをAN通信の佐藤浩市に救われたという部分が見ものだ。また、カジノ法案や自己責任論についての問題を風刺していたり、日本は真の独立を果たしてないという政治家の主張も見られた。
asicaさんへ。
この映画はエンタメ系のメインの部分と、「森は知っている」の青春篇が交互に描かれて、ノスタルジーも少し感じられる作品になってました。まとめてしまった分、中途半端な感じにもなりましたが、青春篇は好きです。そして、その友人の柳ってのが気になって気になって・・・続きが見たくなりましたよ~
原作者の吉田修一の大ファンで、映像化を意識してない頃の彼の作品が特に好きです。悪人以降は映像化を考えて書き出版前に監督に原稿を読ませたりしていて、なんだかなあって思ってるんですが、この作品は「純文学とエンタメを行ったり来たりしてる作家」って言われてる彼らしいエンタメ系で、好きな作品で人にも勧めたくらい最後スカッとする話だったと記憶しています。映像化されてるんですね。