「大人になったから、大人には必要無いから」デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆 サカマサさんの映画レビュー(感想・評価)
大人になったから、大人には必要無いから
レビューというよりデジヴァイスについて考察していきます。
ラスエボ・beginning、どちらもデジヴァイスがキーアイテムになる作品でした。
では何故、ラスエボでは石化したのか、beginningでは消滅したのか。
そこを書いていこうと思います。
まず結果から書くと、ラスエボでデジヴァイスが石化したのは、パートナーの未来が大まかに決まったから、beginningの方でデジヴァイスが消えたのは、必要が無くなった、というのが理由の1つだと思います。
光子郎の技術によりデジヴァイスの機能をスマホに移したりデジヴァイスなしでゲートを開いたり(triやラスエボ序盤シーン)とデジタルワールドへの行き来はもうデジヴァイスに頼らなくてもよくなり、デジタルとリアルが近しい存在となった証なのかと思います。
そして、02最終回ラストシーンでは誰もデジヴァイスを持っていなかったことからも、デジモンとのパートナー関係ではなく、居て当たり前の状態になり、わざわざデジヴァイスを通じて繋がる必要が無くなり、デジヴァイスはいらない世界になったのだと思われます。
ただ、ここまでは表向きの理由で、真の理由は別にあります。
それは、
”大人になったから”:ラスエボ
と
”大人には必要無いから”:ビギニング
です。
これではあまり変わらないではないか、と思われる方もいると思いますが、大枠ではほとんど同じです。
ただ、ラスエボとビギニングでは意味合いが変わってきます。
ラスエボでの大人とは”人生における別れ”が子供を成長させ大人にする、という苦悩と葛藤がテーマの1つだと思います。
そしてこの別れまでの時間が太一達を大人にし、最後デジヴァイスは力を失い、アグモン達は消えました。
しかし、ビギニングは”人生において繋がりこそ宝”とでも言うように仲間・友・家族が自分を成長させ大人にするというイメージが強く、大輔とブイモンが拳を合わせたり、握手したり、ハイタッチしたり、その時々で必ず友情を確認していて、ラストシーン、デジヴァイスが消えてもブイモン達はリアルワールドにとどまっていました。
この違いは大きいのではないでしょうか。
デジヴァイスの力の消失とデジヴァイス自体の消滅。
どちらも心の成長、大人になることをテーマにしている中で繋がりと別れは対極にあると思います。
では何故ラスエボは”なったから”でビギニングは”必要無いから”なのか。
それはデジヴァイスの事を考察すると分かってきます。
TV02のラスト、大人になった主人公たちとその子供たち、そしてパートナーデジモンたちが居ましたが、彼らの手にデジヴァイスはありませんでした。
つまり、ウッコモンとルイの最後の願い(願わない)がそのまま未来に繋がっていることがわかります。
しかし、ここで一乗寺賢に注目すると、彼は刑事となって活躍しており、パートナーのワームモンはスティングモンに進化しながら賢のサポートをしていました。
ここで今回の映画でデジヴァイスが消えたことを考えると、デジヴァイスとは大人になると必要が無くなる、という可能性が出てきます。
デジモンシリーズはテーマとして子供たちの魂の成長が主体となっています。子供の感情はその時々で大きくゆらぎます。
そして子供たちの心の力、思いの力は時として爆発します。
それがアグモンだと正統進化のメタルグレイモンになるか暗黒進化のスカルグレイモンになるかの差になります。
しかし、大人になれば多くの経験を経ているためあまり動じず、冷静に対象出来るようになります。
triでは子供から青年への成長、決断力が試されており、決意を固めた為、デジヴァイスが呼応しオメガモンの新たな進化が生まれました。
ラスエボは大人への階段を登り、将来の道、人生の可能性が絞られてくるとデジモンとは居られなくなる、とされていましたがこれは一部間違った解釈だったのではと考えています。
本当の解釈は太一達が大人に”なった”時、デジヴァイスの力が必要無くなり、デジヴァイスは効力と意義を失う、だったのではと思っています。
では何故アグモン達は消えてしまったのか。
そこにはルイとウッコモンが関係してきます。
ルイはウッコモンのデジタマと出会った時、願いました。
友達が欲しいと。
それにウッコモンが応え、ウッコモンは生まれてきました。
そしてウッコモンは絆・友情の証としてデジヴァイスを生み出します。「これでいつまでも繋がっている」と。
この時、大いなる存在によってデジタルワールドにひとつのルールが追加され、デジモンが選ばれし子供たちとパートナー関係を結ぶ時に、デジヴァイスが”強制的”に生み出されるようになりました。
つまり、
「デジヴァイスはパートナーとの契約の証」となったのです。
そして、これ以降全ての選ばれし子供たちはパートナーデジモンと共にデジヴァイスを持つようになりました。
ただ、本来ここで生み出されるデジヴァイスはただのアクセサリーのようなものだったはず。
しかし、これに目を付けたのがホメオスタシスとゲンナイ達。
当時、ダークマスターズに追われていたゲンナイ達は選ばれし子供たちのパートナーとなるデジタマとデジヴァイスを保護。この時、デジヴァイスが生み出されるルールにホメオスタシスかゲンナイが1つ力を付け加えたと考えられます。
それが浄化や進化といった聖なる力です。
デジヴァイスと言う名は聖なるデバイスという意味を持ちます。その力は進化や浄化だけでなく、心の力、魂の力を制御・増幅する機能もあったのではないかと思っています。
心の成長による成熟期への進化、個人の個性にあった心の進み方で完全体に、そして決意による究極体へ。
この力の補助や制御がデジヴァイスの力なのではと考えており、これの根拠に太一達の持つもう1つのアイテム、紋章とタグがあります。
紋章とタグは完全体への進化に必要だったアイテムです。しかし、これもアポカリモンとの戦いで無くなりましたが、心が成長した太一達にはもう必要無く、最終決戦で全員最終進化までさせており、その後のtriでも全員究極体にまで進化しました。
これを踏まえると、紋章とタグは完全体への進化をより安定して行うための増幅・制御・補助アイテムだったことがわかります。
そしてこの紋章とタグもゲンナイ達が最初管理しており、この時にホメオスタシス&ゲンナイ達の手によって解析されていたと思われます。
ここまでを踏まえて、デジヴァイス・紋章・タグは選ばれし子供たちへの完全サポートアイテムだった事が分かると思います。
そこで最初の理由、”大人になったから”と”大人には必要が無い”に戻ると、
デジヴァイスとは、
・浄化や進化の補助アイテム
・子供の心の力の増幅アイテム
・パートナーデジモンとの契約の証
となります。
デジヴァイスとは、選ばれたのが”子供”だったから必要だったアイテムなのです。
だからこそ、”大人になったから”、”大人には”、必要がないアイテムなのです。
そして、ここまで残っていた謎、
”何故アグモン達は消えてしまったのか”
それは
「デジヴァイスのルールが一種の”呪い”や”歪み”になってしまっている」
からです。
デジヴァイスのルール、
デジモンが選ばれし”子供”たちとパートナー関係を結ぶ時、強制的に(子供たちをサポートする)デジヴァイスが生み出される。
そう、”子供”であるからデジヴァイスは生み出されるのであって、”大人”には必要がないのです。
だから、太一達が大人に”なった”からデジヴァイスは力を失い、強制的なパートナー契約が解消され、ウッコモンの言葉
「これでいつまでも繋がっている」
が曲解され、絆・友情の証であるデジヴァイスが力を失うと、”繋がり”が切れてしまい、アグモン達は消えてしまったのです。
ただ、まだここではアグモン達が消えた理由には辿り着いていません。
では、何が何と繋がっていたのか、何故アグモン達が消えたのか。
それは、
デジヴァイスがデジタルワールド(のルール)と繋がっていたから
デジタルワールド(のルール)との繋がりが大人になった太一達と切れたから
逆をいえばリアルワールドとの繋がりが子供の時の魂のままのアグモン達と切れたから
未来の可能性が狭まったから
だから、アグモン=太一の魂の一部(可能性)が大人の太一の魂本体と乖離してしまい、消えてしまった。
選ばれし”子供”。
子供である事がデジタルワールドと繋がる資格。
02の及川がデジタルワールドに行けなかった理由。
それは、大人だったから。
そう、子供(未来が未知数で希望に溢れている可能性)じゃないとデジタルワールドに入れないと考えれば02最終回の及川の言動に説明が着くのです。(アルケニモン達を使いダークタワーや暗黒の種等、どうにかしてデジタルワールドに行くために暗躍していた。ただその行動力は及川の意志以外にヴァンデモンの復活するという意思も介在していた)
そして、ビギニング。
ルイはウッコモンとの最後、何も願わず、デジヴァイスが生まれない世界を作り、子供である事の資格を無くし、”絆”や”友情”、そして”運命”で結ばれた”人間”と”デジモン”が自由にデジタルワールドとリアルワールドを行き来できる世界に作り替えたとしたら、02のラストシーンに完璧に繋がるのです。(未来では大人や子供に関わらず全人類がパートナーデジモンを持つ世界になっている)
最後に、多くの人が否定するデジヴァイスの消失は、太一達とアグモン達が再会するための一番の障害だったのです。
そして、デジヴァイスが無くなった今、
デジヴァイスを使わずともデジタルワールドに行き来できるようになった今、子供だった彼らとパートナーが”運命”の再会を果たす時は近い、と思われます。
ここまで長くなりましたが、これがラスエボとビギニングの違い、デジヴァイス消滅の考察となります。