「斬新さと人に寄り添う優しさが丁寧に描かれている」search サーチ 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
斬新さと人に寄り添う優しさが丁寧に描かれている
確かに表現手法は斬新で、サスペンスとしても面白かったのに、『衝撃』と言えるほどのインパクトは無かった。理由をあれこれと考えてみたが、たぶんテーマ自体は決して新しいものではなく、誰もが分かっていることだからだと思う。
例えば、次のようなことへの警鐘。
・誰とでも気軽に繋がることが出来る半面、「匿名性に隠れた悪意」ともまた簡単に繋がってしまうこと。
・無防備なほど警戒心が薄いまま、顔や部屋の様子をネットに晒すばかりか、接触機会すら簡単に与えてしまう安易さ。
SNS全般或いはドローンによる物理的なもののやり取りなども一層機能が向上し、利便性とリスクはますます高くなるのに、トラブル回避の方法については誰も教えてくれないし、様々な形で襲ってくる悪意に対してはそもそも対応マニュアルを作りようがない。
いつ自分や自分の大切な人に予期せぬ邪悪が降りかかってくるかも知れないという不安を誰もが抱えているが、でもそれは自分ではないはず、という根拠のない楽観でやり過ごしているのが現実なのかも知れない。
この映画の救いは、父親と娘の心情に寄り添い続けていることだと思う。もし監督が斬新で奇をてらうことにばかり気持ちがいってしまうと、内容が薄っぺらくなってしまうことがあるが、家族の絆や思いを丁寧に描いているので、そこから生まれる人間ドラマとしての要素が多くの人の胸を打つのだと思う。
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