「なんとなくで物事を判断するな」少女Aの殺人 容疑者ドロレスは、本当にカミラを殺したのか? つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5なんとなくで物事を判断するな

2025年8月4日
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鑑賞方法:DVD/BD

物的証拠がなく状況証拠だけで被告となったドロレスはカミラを殺したのかいなかを楽しむ作品だと思う。
その状況証拠でさえ終盤になるまでほとんど語られることがないため、この裁判と同じように、ドロレスに対する心証、イメージだけで彼女を判断することになる。
作品内の人物も観ている私たちも「なんとなく」で、犯人だとか違うとか言っているわけだ。

事件から2年半、そして裁判という流れの中で、ドロレスの家族や友人、ドロレスまでも壊れそうなほどギクシャクしていくことになる。
あまりの証拠の少なさとイメージのみで起訴された、このデタラメとも言えるような裁判の有罪か無罪かだけを皆が気に掛ける中で、ドロレスの弟だけが真に大事なことを忘れずにいる。
それは「犯人だとしても愛している」だ。
しかし母親から二度とそんなことは言うなと殴られる。
今のドロレスにとって大事なことは、ただ愛してくれる存在のはずだ。真実や、有罪か無罪かではないのだ。
常に事件に巻き込まれないようにと遠ざけられていた弟だけがドロレスにとっての真実を見失わずにいたことが、この事件の過剰とも言える注目度と、それに翻弄された家族を表す。

と、楽しみ方としてはこんな感じのサスペンスだろうが、作品のメッセージは少し違うところにある。
中盤でピューマが逃げた話があるが、証言者のお婆さんに信憑性がないため、警察は形だけの封鎖などをしているものの、住民の誰もが気にしていない。
やはりここでもイメージのみで物事を判断しているのだ。
しかし、カミラ殺害事件に関わる家族などは別にして、地域住民にとっては、ドロレスの判決よりも脱走したピューマの方が自分に直接被害が及ぶ可能性がある分、問題のはず。
エンディングには脱走したピューマの姿。
大事なことを忘れずに、イメージに流されることなく正しく判断しろと、愚かな民衆に訴えているようだった。

つとみ
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