「この映画のコメントをしたくて、会員登録しました。この感動をうまく言...」ROMA ローマ ユノユノ☆さんの映画レビュー(感想・評価)
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この映画のコメントをしたくて、会員登録しました。この感動をうまく言葉には出来ないのがもどかしい。
冒頭のシーンから監督の意図することが伝わる。主人公の家政婦が一生懸命に石の床をゴシゴシと洗い流す映像が続く。何度も流すが、うまく排水されない。これを見て、この映画が順風満帆な映画でなないのだと心づもりをした。
予想通り、まだ幼い主人公と舞台であるメキシコには幾多の難が訪れる。何度も訪れるのだが、前半はまるでドキュメンタリーを観ている様な感覚だ。なぜなら、この映画には、BGMもなければ、登場人物の表情のアップもない。画面もモノクロで主人公は俳優経験ゼロと言うのも良い。大袈裟な表現を敢えて避け、淡々と流れる映像に、ぐいぐいと引き込まれて行く。
予期せぬ妊娠に見舞われ、出産するも死産となった。息をしない赤ん坊を抱きながら涙する彼女。その涙は、実は懺悔の涙だったことが後になり分かる。本当は生まれてほしくなかった…と、初めて自分の心を吐露した主人公。
吐露したのは、一家で出掛けたビーチの荒海にて。泳ぐ事が出来ない主人公だか、毎日子守りをしている子ども2人が荒海にさらわれてしまったのだ。
この映像は怖かった。まさか3人とも溺れ死んでしまうのか!どうか助かってくれ!と心の中で叫んでいた。
泳げない人が、あの様な波の中へ入って行けるのか??主人公は大切な子ども達を助けたい一心だったのだろう。やっとの思いで助け出した2人と抱き合っている所へ、雇い主の母親や他の兄弟達も賭け寄り抱きしめ合った時に主人公が発した言葉が「本当は生みたくなかったの」だった。抱きしめ合いながら、一家は各々に泣いていた。クレオは懺悔の涙。子ども達は溺れた恐怖からの安堵。長男は父に捨てられた悲しさ。母親はこれから母子で生きて行く船出の不安だろうか。
が、しかし、このビーチへの旅行は主人公にとっても、一家にとっても良い幕開けとなった様だ。旅行から帰ると、留守番の祖母?が子ども達の部屋の模様替えを行っていた。末っ子が「うん、僕これ気に入った」と、この映画で初めての明るい言葉を発した。その後、予期せぬとはいえ出産を望まなかった赤子への懺悔から解き放たれた主人公。本当に守りたい命は、私でも守れるんだ!と自信を取り戻したのだろう。屋上へせんたく物を干しに行く、主人公の足音は何とも軽い足音だ。その階段は真っ青な青空へ続いている様な映像に、私も心から安堵した。冒頭の、何度流しても排水されない不快さはもうなかった。
この映画をつまらないと評価する人もいる様だが仕方がない。この映画は、観る人がどれだけの人生を経験してきたかにより、評価が分かれる映画である。
監督の伝えたい事をどれだけ受け取れたかは分からない。が、しかし、私はとても心を揺さぶられた。この映画に出会えた事に感謝したい。