劇場公開日 2019年2月15日

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「◇全てが変動値の世界観」女王陛下のお気に入り 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0◇全てが変動値の世界観

2024年2月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

 女王陛下権威とは、国を司る根幹を成すものであるべきなはずです。この物語の中心人物であるアン女王は1702年から1714年の長きに渡り、初めはイングランド王国・スコットランド王国君主として、やがて初めてのグレートブリテン王国君主として在位したステュアート朝最後の国王です。彼女の心の優柔不断がこの物語の不穏に揺れ動く歪な軸を為しています。

 女王陛下の「お気に入り❤︎」の座を巡って、二人の女性が双方を潰し合うように、何でもありの抗争を繰り広げていく展開が、ぐちゃぐちゃに泥臭い人間模様をグツグツと醸し出します。そこに正義はあるのか、「愛はあるんか?」いえいえ、人間の情動も行動の動機もそんな単純なものではありません。

 ヨルゴス・ランティモス監督作品に共通して感じるテーマは、人と人の関係性の中で揺れ動く価値観の姿、その滑稽な流転です。われわれは、自分は冷静で客観的な判断を下していると思い込みがちですが、その時の気分とか周りに関係する人々の機嫌とか時代の環境とかによって判断基準は揺れ動くのです。正義と悪、愛情と憎悪、それぞれ複雑に絡み合いながら変動していく残酷な#人間喜劇 がそこにはあるのでした。

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私の右手は左利き