劇場公開日 2019年2月15日

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「飾りを捨てた女達の宮廷愛憎劇」女王陛下のお気に入り みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0飾りを捨てた女達の宮廷愛憎劇

2022年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

興奮

単なるドロドロした愛憎劇ではなかった。本作は、史実と愛憎劇を巧みにブレンドしていることと、宮廷を舞台にしたことが奏功している。ブラックユーモア、卑猥な台詞は飛び交ってはいるが、気品ある三人の女達の宮廷愛憎劇として出色の出来映えの作品である。

本作の舞台は、18世紀初頭のイングランド宮廷。アン女王は、健康に恵まれず、優柔不断であり、大切な決断は、側近のサラ(レイチェル・ワイズ)が牛耳っていた。ある日、サラの従妹と名乗るアビゲイル(エマ・ストーン)が召し使いとして雇われる。そして、サラとアビゲイルは、女王の側近の座と、寵愛を得るために、激しく競い合っていく・・・。

ハラハラ、ドキドキするストーリー展開に加え、左右/横の動きを極力排除し、奥行きへの動きを多用したカメラワークが効いている。横の動きは平面的であり安心感があるが、奥行きへの動きは立体的であり不安感がある。観客の不安感を煽っている。全編、落ち着いて観ることができない。

男勝りで強気なサラ、柔らかで狡猾なアビゲイル。彼女達の虚々実々のバトルが本作の真骨頂である。一切の虚飾を排除した、剥き出しの本性のぶつかり合いは、凄みがある。理性という鎧で本性を隠して生きている私の心を強く揺さぶる。権力奪取という欲望を満たそうとする彼女達は超利己的であるが、その眼は輝き生気に溢れている。反面教師かもしれないが、彼女達の生き方は人間らしいからである。

一方、サラとアビゲイルに翻弄されるアン女王は、彼女達の渇望する権力の頂点にいるが、迷い続けている。悶々としている。物質的な豊かさを享受しながら、権力を持て余し、精神的な豊かさを求めている。女王の姿は現代人の鏡のようであり切ない。

本作は、本性のままに生きる女達を描くことによって、組織に縛られて身動きが取れず、没個性化している現代人への鋭い問題提起をしている。人間らしさとは何かを深く考えさせられる作品である。

みかずき
琥珀糖さんのコメント
2024年1月22日

コメントそして共感ありがとうございます。

女王陛下の重積・・・国の舵取りと国民の命、本当に疲れ果てますね。
それにしてもオリヴィア・コールマンでした。
決して容姿に恵まれた女優ではないのに、どうしてここまで
惹きつけられるのでしょうね。
イギリス人ではない監督が描く宮廷絵巻。
シニカルで強烈で、女王陛下を描く事で、人間を
俯瞰的に見せてくれたのでしょうか!
何回観ても難しいです。

琥珀糖
Apollōn_mさんのコメント
2023年6月16日

コメントありがとうございます。アビゲイル達の本能のままに、生きる姿が、少し羨ましい気もします。

Apollōn_m