「その9 この映画は面白い」女王陛下のお気に入り ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
その9 この映画は面白い
エリザベス一世が幼少期を過ごしたという屋敷での撮影は本当に豪華。
アン王女を演じたオリヴィア・コールマン、「ロブスター」でも監督とタッグを組んだレイチェル・ワイズ、「ラ・ラ・ランド」でアカデミー女優賞を受賞したのが記憶に新しいエマ・ストーンの3人は特に過去最高の演技なんじゃないか?というくらい、3人のドラマだけで映画としてのドライブ感が最高速度で進むので2時間があっという間に終わる。
そしてラストには度肝をぬかれる。
物語中盤でサラがアリゲイルにさりげなく伝える「女王を甘く見ないでね。」という言葉がここで効いてくる。
ウサギを踏み付けたアリゲイルに、私の脚を揉めと命じるアン女王。アリゲイルの頭を抑えつけ、改めてこの2人の力関係というものがどうであったか見せつける。
お前などただのお気に入りに過ぎないと。'The Favourite"というタイトルがラストで改めて提示される。
このシーンの踏み付けたウサギの映像がアリゲイルに重なりアリゲイルが消えていく演出、緊張感を高める音楽、調子に乗っていた表情から一気に深刻な表情に変化するエマ・ストーンの演技、最高である。
最高に楽しい作品だった。
ただ唯一、「その1」という間抜けな字幕は除いて。
「第1章」とかでいいじゃないか笑
てか字幕いらないでしょそこって思いましたが私の感覚のほうがおかしいのかもしれないので、このへんにしておこう。
追記:
本日二度目の観賞で気づいたことをメモ。
エンドロールで流れるエルトン・ジョンの「スカイライン・ピジョン」という曲は"地平のハトは広がる世界を夢に描き、その日を待つ。翼を広げ、もう一度飛び立てる日を」と歌っています。
ハト"Pigeon"とは"若い女性、お嬢さん"という意味もあるそうで、この映画ではまさにアリゲイルのことを意味していると思います。
なんという曲選びのセンスなのだろう。
物語に挟まれる、サラとアリゲイルのハト撃ちのシーン。
アリゲイルは本当はエルトン・ジョンの曲のように、その若さでさらに大きな世界へ羽ばたくべきだったんじゃないだろか。彼女がハト撃ちで撃ち落としていたのは、彼女の未来だったんじゃないだろうか。
あのラストを見ると、彼女はもう羽ばたくことは出来ないだろう。彼女はハトではなく"ウサギ"なのだ。