劇場公開日 2019年2月15日

「食い合わせの悪さを嘲笑する凶悪なトラジコメディ」女王陛下のお気に入り よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0食い合わせの悪さを嘲笑する凶悪なトラジコメディ

2019年1月25日
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鑑賞方法:映画館

 18世紀のイングランドはフランスとの戦争の真っ只中だがアン女王は無関心。病弱であるだけでなく様々なコンプレックスとトラウマに苛まれるアンを影で支えているのはアンの幼馴染サラ。アンを意のままに操って政治の実権を握る彼女の前に現れたのは彼女の従妹アビゲイル。賭博で没落した元貴族の娘アビゲイルは召使として宮廷にやってきたが初日から壮絶な虐めの洗礼を受ける。そんな試練にもへこたれないアビゲイルはアンの病状を知りアンの寵愛を得るための秘策を思いつく。

 鬼才と称されるヨルゴス・ランティモス監督作品はこれが初鑑賞、格調高い高貴な雰囲気の中に下品なシャレをバンバンブチ込んでくるさっぱり笑えない宮廷喜劇に驚きました。ヒステリックで傲慢なアン、アンの寵愛を巡って争うサラとアビゲイル、彼女たちの周りで暗躍する政治家達、さらにその周りに蠢く怪しげな人々、登場人物の誰にも共感し難いことが功を奏して、オリビア・コールマン、レイチェル・ワイズ、エマ・ストーン、ニコラス・ホルトといった実力派俳優陣による極めて濃厚でドロドロのドラマをニュートラルな視点から俯瞰できて意外とスッキリしたのど越しでした。歴史劇の体ですが言葉遣いは現代のものだし時折放り込まれる歌や踊りも全然今っぽかったりして結構デタラメ、すなわち300年前の話に現代風刺をコッテリ塗りつけて食い合わせの悪さを敢えて意図した凶悪なトラジコメディとお見受けしました。

 ちなみに何の忖度もない下ネタがテンコ盛りなのでデートには全く不向きです。

よね