劇場公開日 2019年12月20日

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「相変わらず素晴らしい」この世界の(さらにいくつもの)片隅に sengoku2501さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0相変わらず素晴らしい

2020年1月8日
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【完全ネタバレではないが、描写に関する記述あり】
まず、自分の人生でもトップクラスの映画。

何が素晴らしいって、描写が緻密かつ中立。

人々の暮らしをこれでもかと言うくらいリアルに描いている。
自分は、戦争世代の祖父祖母の昔話好きな人間であり、そこかしこにちりばめられたネタやこだわった描写がよくわかる。
戦争を知ってる世代が見たらもっと気づけるのでは?
瓶つき精米、くず落としの穴、落とし紙、陶器のアイロン、灯火管制と、それをやめる描写、建物の防空迷彩、着物の女性が「細袴穿いてるから」木に登れる・・・

兵器関係も緻密に再現している。
焼夷弾ひとつとっても、不発時含む作動、ストリーマーに火が点く現象、刻印まで完全に。
色付煙は、軍艦が自射弾を識別するため(識別できないと射撃修正できない)だし、大和の手旗も意味がある内容を打っているし、あの時限爆弾シーン前に投下される爆弾には時限信管の識別塗装、米軍機の機銃掃射時に曳光弾の混入率まで再現(笑)

これを聞いてオタクだ右寄りだと言う方がいるでしょうし、勝手にどうぞという感じですが、描き手側は中立です。
だって右寄りも左寄り作品も、自分に良いようにオーバーに表現したり、嘘を混ぜ混むが、この作品は真実のまま描いているだけだもの。

そこが凄いんですよ。徹底して真実のままに日常を切り取っている。受け取り方は我々に任されている。

私がこの映画を見て感じたのは「人生なるようになるし、どうにもならないこともある。戦争しなくても死ぬときは死ぬ。過ぎたことは覚めた夢と同じ。価値観や気持ち、秘密や過ちは人それぞれ。しかし芯を持って生きねばならない。」
ということ。

右寄りの方、日本が核武装すれば、強硬な政治をすれば、領海侵犯は即撃沈すれば、戦争はなくなりますか?

左寄りの方、自衛隊なくせば、米軍撤退すれば、オスプレイを締め出せば、戦争はなくなりますか?

この作品の人間関係や当時の風習にあれやこれや苦言を呈する方、それは価値観の押し付けになってませんか?

難しいですが、人生は「許しと思いやり、ただし芯を持つ」ことだと自分では思っているので、人間関係が多少拗れる描写も含め、しっくりくる映画でした。
だってああいうの現実にもありますもんね。

sengoku2501