「ROCK'N ROOL」ダンスウィズミー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ROCK'N ROOL
ミュージカルは得意分野ではない。でも、この作品はありだ。
踊る事も歌う事も拒絶してきた主人公が、催眠術によって、踊らずには歌わずにはいられなくなる。この設定が活きてる!
ラストシーンでの、彼女が普段の生活に戻った時は、大きな箱とも思えるエレベーターの中だ。通勤の時間帯、音も無ければ色も無い。皆が俯き空気は停滞しているように見える。
そことの対比が強烈だった。
音楽が流れたら無条件に体が動く。
目を輝かせ感情を歌いあげる。
ショーが終わった後の舞台は散々だ。
色んなものを巻き込んで、色んなものをぶっ壊す。軽いテロのようだ。
迷惑極まりない催眠術の呪い。
でも、その時の開放感までは嘘ではなかった。
彼女にとって自分らしくある事は、音楽に身を委ねる事だったようだ。
その選択に架空の世界を感じるものの、三吉さんが踊って歌う姿は華やかで美しく、何より心の底から楽しんでもいるようであったので、妙な説得力を感じてた。
ミュージカルは苦手だが、三吉彩花さんはずっと見ていられると思えた。
宝田氏に代表されるように、物語には結構胡散臭い人間が頻繁に出てくる。
華やかなミュージカルシーンとのバランスなのかもしれないが、わざわざソレをチョイスする意図が俺には分からなかった。
監督は照れ屋で案外、常識人なのかと邪推するくらいだ。
若干の中弛みを感じるものの、ミュージカルシーンはどれもこれも楽しくて、満足。
スマホが普及してからこっち、1日の大半を画面を眺めて過ごす昨今…。
それも楽しいんだろうけど、それしか知らないのは勿体なくないか?と。
顔を上げて、胸を張って、五体を思う存分振り回し、溜まった毒を吐き出すかのように声を出してみたらどうだ?と。
その声が届く仲間はきっといるよ、と。
長い人生のたった1週間、無自覚な檻から力任せに引きずり出されて濁流と激流に押し流されるのも案外面白いよ、って。
ま、それが出来ないからこの手の映画が楽しいと思えるのだけれど。
ミュージカルなんだけど、ただのミュージカルではなく…ロックなナンバーはあまり出てこないのだけど、監督と脚本がロックンロールでシェゲナベイベーな作品だった。
再三言うが、
三吉彩花さんがとても美しい。
このレビューは、その色目からだろと思われても、否定が出来ない程にしなやかで美しい。