「バリエーションも観てみたい」ダンスウィズミー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
バリエーションも観てみたい
音楽の持つ魔力、初めてウォークマンをつけて観る見慣れた街や人が映画の1シーンに化けた驚きが蘇った。日常の中の非日常、フラッシュ・モブには遭遇してみたいと常々思っていた。ヒロインのミュージカル嫌いはトラウマだったのか、それでもミュージカルは嘘っぽいと思っている人も少なからずいるだろう・・、嫌い嫌いも好きの内という迷言もあるが監督はそこら辺を面白くひねってみたかったのだろう。宝田さん探しはカーニバルの遊具で魔法にかかり、元に戻ろうと遊具を探すシチュエーションのトム・ハンクスの「ビッグ」に似ているのだが後催眠は魔法ではなく医学的根拠もあると医者に念押しさせるところは日常性に拘る矢口監督らしい。らしいと言えば旅先で知り合ったストリートミュージシャン洋子(Chay)がギターを持って元彼に殴り掛かるがウェディング・ケーキを壊しただけでギターは無事なのも楽器に対するリスペクト、デリカシーに思えた。落とした焼きそばを犬が食べるシーンがあったがエンドロールに動物虐待はしていませんとのクレジットがありました。らしくない点ではヒロインが千絵(やしろ優)に向かって暴言を吐くシーン、自分勝手な千絵に苛立っているだろう観客の溜飲を下げるための代弁なのでしょうが全人格否定は頂けませんね、いちおう人なのですから。概ね楽しめたのですがエンドロールに流れた本編とはムードの異なる素敵なJAZZ(Stone with Wind)を聞いていたら欲が出てきました。普通、ミュージカルの楽曲はオリジナル、謂わばオートクチュールですが本作ではプレタポルテが出てきますので、詞先、メロ先ではありませんが別の楽曲だったらどういう展開かまたはその逆も観てみたくなりました。ケーススタディに悩むというか楽しむ矢口監督のメイキングものでも良いですし続編でも、洋子のスピンオフでもよいのでもう少し観てみたい・・。
それにしても今日の映画は始まる前のCMや告知やらで25分と長かった、本編と違い音の密度も高いのでうるさくて参った、苦しい台所事情は分からなくもないが考えてほしいものです。