「父・夫、妻・母、息子の物語」グッバイ・クリストファー・ロビン りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
父・夫、妻・母、息子の物語
第一次世界大戦から帰還したアラン・A・ミルン(ドーナル・グリーソン)。
『西部戦線異状なし』に描かれたような激戦を切り抜けてきた。
PTSDに陥った彼をよそに、根っからの上流階級気質の妻ダフネ(マーゴット・ロビー)は、彼に従前どおり舞台喜劇の戯曲を執筆することを願っている。
とはいえ、アランの傷はいえず、家族を得れば・・・という期待から、息子を出産する。
愛息子はC・R(クリストファー・ロビン)と名付けらるが、アランの傷は癒えない。
それでもどうにかロンドンで暮らしていたアランは、ロンドンを離れ、田舎町で暮らすことを決意する。
息子クリストファー・ロビンは9歳のときだった・・・
というところからはじまる物語で、「くまのプーさん」誕生秘話の実録物語。
あらば、「くまのプーさん」に描かれた楽しい日々が綴られるのかと思うとさにあらず、アランのPTSDは癒えず、癒えていく過程で息子と過ごした日々を「くまのプーさん」として架空の物語として執筆。
アランの傷は癒されるが、人気になったプーとクリストファーは世間の引っ張りだこ。
根っからの上流階級気質(セレブ。とにかく周りからちやほやされたい)の妻ダフネは、クリストファー・ロビンをことあるごとにマスコミに露出していく。
しかし、アランはそれを抗えない・・・
と展開する物語はシビアのひとこと。
絶対、ディズニー映画では描けない雰囲気で、気弱になっていくアランをドーナル・グリーソンが巧みに演じている。
そんな物語だから、両親によってスポイルされていく少年クリストファー・ロビンの姿は痛々しく、幼いウィル・ティルストンがこれまたうまく演じている。
なので、ディスニーのプーさんしか知らない観客(わたしもこのひとり)には、かなりのショックで遣り切れなさもものすごくあるのだけれど、父と息子、夫と妻、有名人と市井のひとびとの関係・感じ方がよく表現されていて、感じるところが多かったです。
なお、吹替え版で観たので定かではないのだが、17歳になったクリストファー・ロビンが第二次世界大戦に志願する際、「一兵士ミルン」といっているのは原語だと「プライヴェイト(二等兵)・ミルン」なのだろう。
有名人になり、プライバシーがなかった彼の、自分個人を表す言葉として使われていたのだと思います。