「戦艦大和は明治維新から太平洋戦争が終わるまでの日本の歴史の集大成という感じがする。」アルキメデスの大戦 Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
戦艦大和は明治維新から太平洋戦争が終わるまでの日本の歴史の集大成という感じがする。
戦艦大和ってすごくいろいろ引っ掛かるところがあってすごいと思う。
当時世界一の大きさを誇った巨大戦艦というだけでなく、明治維新から日清、日露の戦争を経て、対米戦に至るまでの日本の歴史の集大成という感じがする。
日本の歴史全部ではないけれど、その辺の時代を象徴していると思う。
考えてみれば、戦争になってしまったのは、陸軍の暴走のせいが大きい。
なんで暴走するかと言えば、幕末に薩摩、長州その他が暴走に次ぐ暴走で、テロだか革命だかよくわからないけど、結果的に幕府を倒してしまったという成功体験に基づいているような気がする。
日清戦争はいいとしても、日露戦争をして奇跡的に勝ってしまったことも、よかったようだけれども悪いこともあった。
対米戦を始めたのも日露戦争に勝ったという経験が大きいと思うし、大和を作ってしまった大鑑巨砲主義は、結局は日露戦争の時にバルチック艦隊を艦隊決戦で倒したという成功体験から抜けられなかったせいだと思う。
これらの成功は偶然に偶然、それにまた偶然が重なった奇跡みたいなものなのに、そのことが本当には分かってなかったと思う。
一度二度負けたり不都合が起こって修正した経験がないから、このままでいいと思っていた節がある。
もう時代も違うし、環境も全く違うのに、同じことをやろうとして大失敗したということのような気がする。
戦国時代でいえば、桶狭間の戦いを3回やろうとするようなもので、2回くらいは調子に乗ってうまくいくかもしれないけど、3回目は流石にやられると思う。
あとその辺のことについていつも思うのは、徳川幕府が薩摩、長州その他の反抗勢力をを退けて生き残って、徳川幕府を中心とする諸藩連合政権ができていたらどうなっていたかということ。
徳川幕府は弱いからたぶん戦争なしでなんとかやっていくかもしれない。
その場合はたぶん北朝鮮も韓国も存在してなくてロシア領。
中国の北半分もロシア領。
南半分と東南アジアは英仏蘭が支配していて、フィリピンはアメリカ領。
日本は遅れてアジア進出を企むアメリカの拠点として、植民地か属国みたいになっていたかもしれないと想像することがある。
これだと中国も韓国も北朝鮮も存在していなくて、日本はアメリカの植民地か属国みたいな感じで、今とたいして変わらない。
ロシアは怖いけど、英仏蘭とアメリカがいて互いににらみ合っているから容易に手が出せない。
歴史に”もしも”はないけど、こっちの世界の方がよかったみたいな気もしなくもない。
結果論だけど、当時の日本はアジアの人々がそれぞれに独立して暮らしていく為の人柱的な存在になってしまっていて、戦艦大和の撃沈は、当時と戦後のアジアの歴史の中の日本の立場も象徴しているような気もする。
映画の内容に戻ると、本作は原作通りに作りながらも、最後をちょっと変えてうまくまとめていた。
この変更になった最後の部分が肝だと思う。
これを見るだけでも見る価値はある。
たぶん原作よりもよくなっている。
原作以上の映画はなかなかないけど、この映画は原作以上の出来だと思う。
山崎監督はVFXが得意で、監督したいろいろな作品で、原作を超えてくる部分があるけど、この映画は内容で超えてきた。
原作も最初はこの映画みたいに、大鑑巨砲主義と航空主兵主義の対決の話だった。
だけどこの映画の製作時点の原作では櫂少佐も乗り気で、戦艦大和を作りましょうみたいになっている。
そして作るなら最強の戦艦にすると意気込んでいて、設計段階から対空装備を完璧にして、ドイツのユダヤ人技術者呼んできて、対艦ロケット誘導弾つけちゃいましょうみたいな話になっている。
個人的には原作読みながら、空母より戦艦の方が丈夫だし、大和がそんなすごい戦艦だったら、時間の問題ではあるけれども、そこそこ戦えたのかもしれないと考えていた。
それはそれで面白いのだけれども、別の話になってしまっているので、この映画の終わり方で終わった方が、現実的でなおかつ深いものがあってよかったのかもしれないと思った。