「楽しみ、そしてちょっと考えちゃうなあ」アルキメデスの大戦 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しみ、そしてちょっと考えちゃうなあ
国力10倍以上の米国との無謀な戦争に向かっている太平洋戦争直前の日本海軍で、日露戦争以来の大戦艦主義を唱える主流派と、これからは戦闘機の時代と空母建造を唱える先進派の争い。大戦艦の見積もり金額がおかしいことを積算計算から見破って事態を逆転しようとする先進派の一員として、数学の天才が、わずか2週間で大戦艦一隻の積算計算を成し遂げられるかどうか、膨大な積算計算を凌ぐ手法を天才は発見できるのか、という話。
大戦艦を造ってしまったら、いよいよ日本は戦争にひた走るという危機感から、先進派に組することになった主人公が後半につぶやく「数学が、この国を救うのかと(感慨深く)思った」というセリフは、かなり心に届いた。ああ、そうでありたいと自分も心から思う。
それも含め、前半から中盤の、「軍機(軍事機密)だからと、設計図も、見積り書も、何も見せてもらえない状況」の中で、本で学び、実際に測るという行為だけで、一歩一歩積算に近づく姿は、エンタテインメントとして見事に成り立っている。原作者はさすがに「ドラゴン桜」の作者だけあって、学問をエンタメにするのが上手い。
胸がすく中盤までで、映画は終わりかと思えば、終盤は一転。みなさんに劇場で鑑賞してほしいが、自分には、快適なテンポの中盤までとの対比で、戦争という狂気が、やるせない思いとして押し寄せた。それは、数学者という(自分が思うには)もっとも世俗と離れたところにいる人々さえも押し流していく。
しかし、史実をもとにして「実はこんな風になっていて、こんなことが起きてたとしたら、面白くない?」と考えつく人たちは、これまた天才だと思うし、おかげで面白い映画を観られる俺は、幸せだわ。
菅田さん、柄本さん、最高でしたね。この映画の好感度を上げてるのは、「軍人としての自覚は人一倍だが、凄いものは素直に凄いと思える」少尉の役を柄本さんが見事に演じて、俺たち観客の疑似体験感覚を補ってくれているからだと感じた。
浜辺さんは、違う時代の女学生という役に、考えてチャレンジしていたので、また成長してくれそう。
舘ひろしを含む名優たちは、今から見ると主流派も先進派もどちらも、「なんか変」(戦争が当たり前のようにベースにある中でのおかしさ)という感じを出してくれてたと思いました。
太平洋戦争の聖域である戦艦大和に挑んだ作品でした。
仰る様に、中盤までは、従来の作品とは違う戦争に挑む斬新な知力の物語でした。
しかし、終盤からは、従来の大和物語になってしまいました。
戦争の狂気に飲み込まれてしまいました。
主人公には最後の最後まで戦い続けて欲しかったと強く思いました。
しかし、それができないのが戦争の怖さなんだな。
戦争って、こうなるんだな。
これが戦争なんだなと強く感じました。
では、また共感作で。
ー以上ー
コメ返し✨
日本で真面にVFX使いこなす監督少ないんですよね〜
だから余計に期待しちゃう。
ある意味山崎監督作品はVFXを見るためかも?w
別件ですが、EP9観ましたか〜
長い年月を考えると、疲れじゃないですが、ドッと来るものがありますよねw
CBさんへ
コメント、ありがとうございました!
平山の気持ちは、CBさんコメントの前者に近いんだと理解しています。もっと言うと、開戦への流れが止まらない世論、煽る新聞、其れが当たり前だと考えている軍部への絶望感。もっと言うと、その状況を作り出してしまった海軍の中枢に自分がいる事への自嘲と後悔。
私達は、あの後、何が起きたかを知っているので偉そうな事が言えますけどw
彼らの立場にあったら、どうしただろうか、って思います。