「山崎貴監督の本気度!」アルキメデスの大戦 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
山崎貴監督の本気度!
冒頭からいきなり戦艦大和が沈没する特撮から始まるという驚きの展開。呆気にとられて感情移入する暇も与えてくれず、銃弾砲撃で血肉が飛び散る残酷さに山崎貴監督の本気度を感じた。また、山本五十六を美化してないところがいい。
数学によって戦争を止めることができるのか?!というテーマは、ある意味間違いではないのだろうけど、国家予算の4割が軍事費に使われるという軍国主義の矛盾を告発するような主張がメインだった。山本五十六の考えもそうだったが、米英との開戦は避けられそうにもないのだ。しかも圧倒的な軍事力の差は一般市民には知られてないし、日清戦争、日露戦争で日本が勝ち続けたことから、戦争を望む声も大きい世の中。巨大軍艦を作るよりは空母を作り、山本五十六は真珠湾への奇襲攻撃をも視野に入れていたのだ。
見積の低さを暴こうとする櫂(菅田将暉)の姿は帝一とダブって見えるが、その真剣さは数学が世の中を変えるという主張そのまま、心地よいものがある。嶋田(橋爪功)や平山(田中泯)の策略を突破できるかどうかハラハラドキドキの連続。小日向艦長のとぼけぶりに笑わせてもらいながらも、圧力のかかる中で苦難は続く。そして大阪まで出向いて、造船会社社長に直談判。浜辺美波がやってきたおかげで鶴瓶師匠も心を開いてくれるのだ。
最後の最後まで会議は波乱含み。スリリングな展開には手に汗握る瞬間もあり、開き直る軍人の姿も見苦しかったりする。そして、数学が平和を導くというテーマよりも、裏テーマとして、軍事費には血税が使われてる点、軍部と巨大軍需産業との癒着、などなど現代でも起こっていることだと考えさせられる。戦争はいつの時代も同じ。勝っても負けても大勢の人間が死んでいくのだから・・・。
たぶんはじめは侵略を受けないための予算だったのだと思うのですが、いつの間にか国家予算の4割も使って用意したものを使わないのは勿体ない、みたいな馬鹿げた動機が国民全体の気分になってしまう。
そんなことが本当にあったかのかもしれないし、今またなんだかイヤーな感じの気分がじわじわと拡大してるような怖さも感じさせられました。
個人的には一億総〝中井貴一〟(いぶきネタです)状態の国もそんなに悪くないと思っているのですが。