「若者よこれが大人だ」マチネの終わりに aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
若者よこれが大人だ
この映画、物語が凄すぎる。淡々とした美しい画面と綺麗な旋律に流されるけど、話は凄いし怖いし、"衝撃"の一言。昼ドラに慣れてないオヤジには。
映像は昔の映画風で、普通のテレビドラマならパリやマドリードの街並みに日本人だと、どこか浮いてしまうところを、とても良い画に納めていた。決しておしゃれ雑誌のようなスノッブな画にならず、見事。
でも、話の衝撃は消えない。
普通の会話では決して言わない、いちいち印象的な引用や台詞。まさに、"歯の浮くような台詞"なのだけど、これが、福山雅治と石田ゆり子にかかると、なんか自然ですんなり収まるのでそれも凄い。
でもやはり、凄いのは物語だ。
もうひとりの主役である音楽もまた、素晴らしい。特に「幸福の硬貨」印象的な旋律とシンプルで柔らかい音。それにおそろしく残る余韻。映像と相まって、聴いているだけで、グッと来る。
だから余計にストーリーの凄さが重い。ザ昼ドラ。恐るべし。
でも、石田ゆり子の演技と雰囲気で、すべてが大人な感じで収まるのだ。冒頭のシーンで「走ると幸せが逃げていくでしょ」という台詞廻しも最高。自然で諭すような言い方なのだけど、上から話している感じがしない。
そしてなんといっても、
「あなたのその幸せを大事にしなさい」
あのシチュエーションでこのセリフを、嫌味なく、複雑な感情を抑え切って、さらりとキメルのは、石田ゆり子以外に考えられない。これが大人なのだ。やってることは若者と変わらないけど、やり方が大人なのだよ。
よくよく見ると、顔のパーツパーツでは、特別美人という感じではないし、年齢相応だったりするが、それがまとまるとなんか華やかで優しげな雰囲気を醸し出して可愛い。不思議な女優さんですね。
まあ、あれこれ理屈はこねたけれど、面白かったのは確か。