「ドライブ・マイカー的な発想か」真実 parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
ドライブ・マイカー的な発想か
「真実」って、かなりストイックっぽい題名だったけれど、フランス映画らしく、おしゃれな感じが出ていた。大女優のファビアンヌ(ドヌブーブ)が自伝本を出版し、お祝いに駆け付けた娘リュミール(ビノシュ)と夫(イーサン)とその娘。自伝本には、都合のいいような嘘が散りばめられ、亡くなった姉のサラ、秘書、元夫のピエールのことをまともに書かれていない。内容について、母をなじる。ファビアンヌが演じている映画は、マノンが演じる母が普通よりも歳を早くとってしまう病気のため、普段は宇宙に滞在していて、7年おきにファビアンヌが演じる娘の元に戻ってくる映画。娘であるファビアンヌは、母がいつも不在がちで寂しいという心情を、戻ってきた母にぶつける役。ファビアンヌは、女優だったため子どもたちに寂しい思いをさせたことを、役柄を通じて追体験する。そして、母役を演じるマノンは、娘だったサラに似ている。かつてサラから役を奪って、悲しみにくれたサラは泥酔して海に入って溺れて死んでいた。
娘リュミールに、「お母さんが殺したんでしょ」と追及されても、うそぶくファイアンヌ。
しかし、実の娘とのやり取り、自叙伝に書かなかった秘書や父が出て行ってしまったこと、マノンがサラに見えてしまうこと等を通して、強がっていたファビアンヌの頑なな心が、溶けていく。
「記憶って曖昧なものよ」っていうのもキーワード。自分の記憶って、自分の感情に基づいて、いいように覚えているもの。過去の思い出が、実は真実ではなかったことを、母から聞いて、母を許す気持ちになるリュミール。
母と和解ができたリュミールは、娘のシャルロットに「おばあちゃんを宇宙船に乗せたい。自分が女優になるまで、生きていてほしいから」って言わせて、ファビアンヌは、本当のこととして喜ぶ。シャルロットが、リュミールに聴く。「これって、真実?」
人と人との関係に関わる真実って、人の心を仲介するから、真意を完全に理解するのは難しい。自分の心さえ自分では、わからないことも多いのだから。まして、記憶にしまわれていく自分が信じる真実は、当てにならないってことか。
映画の中での劇中劇という作風は、「ドライブマイカー」と似たようなテイストでした。
演じることが、自分たちの現実にも影響を与えていくって、現代的なのかもしれない。「いいね」とか「映え」、つまり他者を意識して、自分を絶えず演じて、盛らないといけないような現代に生きる我々にとって、身近な題材ともいえるのではないか。