劇場公開日 2019年6月7日

「イッツ・ザ・サークル・オブ・ライフ。 江ノ島水族館のCMとしては星5つ。」海獣の子供 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 イッツ・ザ・サークル・オブ・ライフ。 江ノ島水族館のCMとしては星5つ。

2019年6月14日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

海獣に育てられたという2人の少年と出会った少女、琉花の一夏の不思議な経験を描くファンタジーアニメ。

主人公、安海琉花の声を演じるのは『告白』『パシフィック・リム』の芦田愛菜。
琉花の母、加奈子の声を演じるのは、『フラガール』『彼女がその名を知らない鳥たち』の蒼井優。
謎めいた海洋生物学者、ジム・キューザックの声を演じるのは『永遠の0』や『るろうに剣心』シリーズの、レジェンド俳優・田中泯。

五十嵐大介による同名漫画(2006-2011)が原作。
この原作はとにかくコマの緻密さが半端ではなく、またストーリーも難解な為、「これをアニメにしたらすごいだろうな〜。ま、でも無理だろうな〜。」とはじめて読んだ時に思ったものです。

この漫画をアニメーション化するという難題に挑んだのは、尖った作風で知られる精鋭集団「STUDIO 4℃」。確かに、『マインド・ゲーム』(2004)や『鉄コン筋クリート』(2006)等のクセスゴ作品を多く世に放って来たこのスタジオ以外に、これを映像化する事は不可能だったかも知れない。
あの圧倒的な海の描写に挑もうとは、正直正気の沙汰ではない。まずはその姿勢を見せてくれた4℃の覚悟にあっぱれを贈りたい。

映像に関しては圧倒的に賛っ!
根源的にして神秘的な海の表現は恐ろしい程のクオリティで、全身が総毛立つ程の迫力と美しさ。これはもう現代の『ファンタジア』(1940)と称しても決して過言では無いでしょう。現状、日本アニメ界における最高到達点のひとつである事は間違いないです✨

ただ、シナリオは壊滅的にダメ。
あの壮大なお話をたった2時間で描き切るのは無理があるだろうから、ある程度しっちゃかめっちゃかになるのは仕方ないだろうと覚悟していたにも拘らず、その酷さに唖然。
おそらく、これは監督も脚本家も観客に伝わると思って作っていない。「わからなくて結構!うちは映像で勝負なんでっ!」という声が聞こえてくる様です。こういう独りよがりな姿勢は気に食わない。

原作も同じように難解です。しかし単行本5巻をかけてキャラクター、世界観の掘り下げをしっかりと行っており、細かいところはよく分からんが総体としては理解出来る作りになっている。また、漫画という媒体ならば自分のペースで読んでいけるし、理解できなければ遡って読み直すことが出来る。腰を据えて物語に集中する事が出来るのです。
しかし映画という媒体では理解出来ようが出来なかろうがストーリーはドンドン先に進んでいく。この様に説明不足なまま物語が展開してゆくと「わけわからんっ!」という感情が蓄積されていって、中盤からは理解しようとすることすら面倒になってしまう。興味が映画から離れてしまうのです。

ジムだのデデだのアングラードだのという何人なのかもよくわからん人達が江ノ島に集まって、それぞれが訳のわからんことを言って、主人公が訳のわからん祭りに参加した、おわり。…って、こんなんで感動出来るかい。
思うに、テレビシリーズでもないのに原作の物語を忠実になぞろうとしたのが全ての間違いなのだと思う。あえて登場人物の数を減らすとか、クライマックスは漫画と大きく変えるとかしないと映画にはならない。
あるいは、逆に15分くらいにギュッと纏めてただただ海の映像だけを見せる短編作品にしてしまうとか。それを江ノ島水族館のCMとして使えばおそらく大絶賛された事だろう。本作も、冒頭に「これは江ノ島水族館のPR映像です」というテロップを入れておけば納得出来た。という訳で、江ノ島水族館のCMとしては星5つ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

※棒読み声優の正体はお笑い芸人「尼神インター」。確か解散したんすよね。いやあ、残念だなあ。

たなかなかなか
もりのいぶきさんのコメント
2020年7月14日

たなかなかなかさん、お邪魔します。

画面綺麗 だけど難解 …ですよねぇ

原作未読での鑑賞だったので
「原作読んだ後ならば、何か新しい発見が」
と、原作の読破に挑むのですが
そのつど
「沈没して振り出しに戻る」
を、繰り返しています とほほ

原作も手強いです (涙)

もりのいぶき
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