僕はイエス様が嫌いのレビュー・感想・評価
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演出は最高だったけれど映像が物足りない
少年時代の瑞々しさとかナチュラル感は半端なく表現されていて、それだけでもウルッとさせられたけれど、やはり、どうしても映像的な物足りなさを感じてしまう。映画であればこその映像的な感動をもっと求めてしまう。内容が悪くなかっただけに余計そう思ってしまった。
小さな奇跡と、大きな悲しみ
小さな奇跡を積み重ねても、イエス様にだって叶えることの出来ないことがある。
それは、時として、大きな悲しみとして、心が潰れそうにもなる。
そんな時は、イエス様に八つ当たりしたって構わないはずだ。
でも、いずれは、わかる時が来る。
そんな悲しみも、かけがえのない思い出となり、永遠に心に刻みつけられるのだ。
それも、奇跡だ。
子供の瞳に映る美しくも不条理な世界
ほんのささやかなファンタジーが、現実の裏に優しく寄り添うようなフィクション作品が好きだ。
美しい雪国の気色、友達とのかけがえない時間、不思議な出来事、事件を経過して少し大人になっていく心。
【子供の目線になって】ではなく、本当に子供が見て感じた気色や想いを写したようで、良質な児童文学を読んでいる心持ちだった。
ミッションスクールが舞台の物語だが、宗教について、子供らしい無邪気さと、いい意味で日本人らしい曖昧さを持って描いているような気がして、肌に馴染む。
「神様ってホントにいるの?」と尋ねた少年が、願い事を叶えてくれる小さなイエス様に会って、祖母と並んで仏壇の祖父に線香をあげ、神社ではお賽銭を納め、手を合わせる。由来は柏手を2度打ち、和馬は指を組んでいる。賽銭箱の上には小さなイエス様がうろついている。「何をお願いしたの?」と笑い合い、食前の祈りでふざけて母親にたしなめられる。
向かい合う神の名は違えども、子供の柔らかで初々しい心の中では、祈りの対象に明確な区分けは無いように思える。
また、宗教と信仰というデリケートな主題でありながら、主張は極めて控えめに感じる。
感覚も、感情も、静かに圧倒的に押し寄せてくる。けれど、解りやすい正否や主義を強く押しつける事がない。
それ故、受け取り手は他人事のように眺めるのではなく、追体験するように自分の中で咀嚼出来る。
私には心地良い感覚だった。
他愛もないお願いを叶えてくれた小さなイエス様は、本当に叶えたい願いを、心から必死に祈った時には、姿を現さず、叶えてもくれなかった。
祭壇に響いた衝撃が、現実の不条理に「何故!」と問わずにいられない人々の、悲痛な叫びに重なる。
大人になって、現実はままならないのよ、と理解して生きようとしている私の中の、割り切れずにいる子供が、由来と一緒に拳を叩きつけた。
逃げ出した鶏、祖母の見つけたへそくり、見た振りをした流星群。
何でも叶えてくれる神様がいない事を少年は知った。
それでもいつか、遠い空から見守る何かの存在を、彼は感じるだろうか。
一面の雪景色、俯瞰で捉えられた子供達、ブランコ、もの思う由来の斜め横顔、いつも同じアングルで撮られた食事風景、色褪せたトーン。
映像も独特の雰囲気を醸して美しく、一枚一枚のポスターのようだ。
何処を切り取っても絵になる。
宗教がテーマではなく
テーマは宗教ではなく友情です。ミッションスクールに通って毎日朝礼でお祈りしたのに、現実は厳しい?信じる者は救われる、か?という疑問が残ります。同じような経験があるので共感できました。雪国の映像が美しく子供達も良いけれど、ただチャーミングなだけではない心に沁みる映画でした。
映像から溢れ出るピュアさとみずみずしさ
サンセバスチャン映画祭 新人監督賞を受賞した作品。
奥山大史監督は22歳で、これがデビュー作
なるほど、とてもみずみずしい作品だった
小学生のユラは、おじいちゃんが亡くなって、一人になってしまったおばあちゃんと同居するために、お父さんの実家に引っ越してきた
ユラが転校した学校はクリスチャンの学校で、お祈りというものを、ユラはそこで始めて知る
友達が一人もいないユラだったが、やがて、ユラにしか見えない神様が現れ、神様はユラにクラスメートのカズキを紹介する
その物語は
「神様は本当にいるのか」
「お祈りは何のためにするのか」
という、大人でも答えづらい疑問について、小学生の目線で描いている作品
たしかに
悲しいことがあったとき
人は「祈りましょう」と言うけれど
祈っても、どうにもならないことはたくさんあるわけで
それを子供に説明しなければならないとなったら
ますます難しくなる
そんな時、大人たちは
「神に祈りなさい」と言ったとしても
それに従順に従うのではなくて
「僕はイエス様が嫌いです」
と言っても良いと思った
むしろ、それが子供ならではの素直さであって、そうやって彼らは成長していく
窓の外の景色を、障子に穴を開けて覗くように
ユラにとっては、ちょっと大人の世界を覗くような
そんな経験になったのではと思う
面白かったのは、その時、監督は映像を少し斜めにしたこと
それは子供の気持ちをよく表していて
これまで真っ直ぐに見ていた社会を
少し斜めから見るようになったということではないのか
映画を観る前に、出演者たちによる
舞台挨拶があって
登壇した佐伯日菜子さんは「監督は子供の感性をお持ちの方」だと話されていた
この映画を観ていて、その言葉が何度も頭の中で繰り返された
景色が斜めなのも、
障子に穴を開けて外を覗くのも
真っ白な雪の上に残る足跡も
ピュアだからこその映像
その感性で、今後、世界をどう観ていくのかが、とても楽しみな監督だと思った
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