「盛り上がりに欠ける」嘘はフィクサーのはじまり ひかりさんの映画レビュー(感想・評価)
盛り上がりに欠ける
リチャード・ギアの演技や表情がいいのでついつい見れてしまうのが良くない。
終始盛り上がりに欠けて鬱屈した不快感だけで終わってしまった。
だいたい最後死ぬ必要あったのだろうか?
正体不明の男なので追うことができず証人喚問出来ないと言うなら、雲隠れするだけでよかったのではないか。そうでないならたとえ死んだとしても死因が怪し過ぎて大統領の疑惑は晴れないように思うのだが。
じゃあ落ちが悲劇的でブラックなのはまあ良しとしよう。だとしたらもっと中盤でノーマンが成功したシーンが欲しかった。
序盤に自分の賭けた人物が大統領になった以降はひたすら「電話がうまくいかない」シーンの連続でイライラしっぱなし。どこかで様々なものが繋がり一つになるのかと思いきや、大して盛り上がらず終わる。
自分の意図を超えて大物になってしまい、遂には黒幕になっていた、というプロットならもっとノーマンの事を本人がいない場所で「あいつは凄い奴だ」というシーンでもないと説得力が無い。
ノーマン側からの描写を主体にしてしまったのが良くなかったのかもしれない。
例えば大統領からの視点をメインにして描写するとどうだろう。友情を感じる男がコネクションを駆使して助けてくれるが、ふと気づくと相手の正体が全くわからない。ノーマンの神秘性と大統領との関係を強調する形だ。
そうなると終盤の大統領の心理にも説得力が増すかもしれない。
私の解釈だがラストの大統領の塩対応は、国民の為に苦渋の選択をしたのではなくノーマンとの関係から目が覚めたのだと思う。中盤の奥さんとベットでの会話に象徴されている、「あなたはあの人に友情を感じているのではなく、都合良く利用しているだけ」
一見ノーマンが大統領の友情を利用して成り上がっているようで、ノーマンが利用されて周りが利を得ている。
だから最後の電話の時には既に気づいていたのかもしれない、ノーマンに感じていた友情は幻想だったと。
実際最後にノーマンにかけた優しい言葉も一切心にもない事が、最後に投げ捨てられたケータイで表されている。
描写次第で化けるとは思うが、結局は小物詐欺師が身の丈に合わない事をして死ぬ話ってだけになってしまった。