「それは愛か。野心か。」マチルダ 禁断の恋 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
それは愛か。野心か。
帝政ロシア次期皇帝の座に就くことを約束されたニコライ2世と、美しいバレリーナの恋の物語。
ロシアは、地理的ハンディを抱える北国というだけに、南国の持つ陽気さなどはない。そのせいか、豪奢な宮殿にしても身に着ける装飾品にしても贅沢さは感じるが、どこかに怜悧で計算高い空気が満ちている。その王室でのロマンスだけに、ニコライに寄せるマチルダの感情は、純粋な愛情だけではないように思えて仕方がなく、打算が透けて見える。情愛が深いが、天性の魔性の女だ。
それを毛嫌いするようだと、この映画は好きになれないと思う。
マチルダは所詮踊り子で、平安時代の朝廷における天皇と白拍子のようなもの。どれほどニコライが求めようが、結局越えてはいけない一線は存在するのだ。むしろ惨めに見えた。
ロシア革命の序章を思わせるエンディングが流れる中、ニコライの末路は旧知の通りなのだが、マチルダののちの人生がどうであったか、それを知った時、女は恐い、そう思った。
公開初日、舞台挨拶付き。
主役を演じたミハリナ・オルシャンスカが黒髪で登場。ロシア人でなくポーランド人だということは多少意外だった。役柄の小悪魔的ではなく、むしろ硬派な印象を受けた。笑顔がとても知的だった。
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