「“世にも奇妙”ライク」LAPSE ラプス いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
“世にも奇妙”ライク
3部構成のオムニバス作品。それぞれの作品は繋がっていないのであくまでもショートストーリー群であり、星新一のようなカテゴリであろうと言うと怒られるかも知れない・・・ならば緩く繋がりをつけていればもっと作品の統一感が出て奥行きが見せることが出来たのではないだろうかと勝手に注文つけてみたりして。
コメディタッチで描かれるのは初めの「失敗人間ヒトシジュニア」。漫画的な映像効果を織り交ぜながら、主人公の心の声をナレーションしながらストーリーを進める。内容はクローン人間の処分という、人間の身勝手を風刺した物語で、そのクローンがそれでも親であるオリジナルを殺せない愛情と憎しみの葛藤を描く、よくあるプロット。後半は心象シーンが多用されているので、皮肉さが半減か。
2つめの「リンデン・バウム・ダンス」が正直分りにくかった。冒頭のボートでの独白シーンも一体誰に何を話しているのか、飲み込めない台詞ばかりで頭に入らない。一応AIによる人間の寿命のを制限及び安楽死というテーマらしいが、植物状態の祖母との妄想上の遊び(一緒にクラブに行く、野山を駆け回る)の夢シーンと、現実の家庭での祖母を置いての状況の進み具合とのギャップに苦しむおばあちゃんっ子の話である。ここまでは正直退屈な展開なのだが、最期が少々ホラー要素をぶち込んでくる。無情にも安楽死が決定した日に、以前情報を得ていたナチスの『人間石鹸』(※都市伝説であり未確証)を祖母に施す。しかし、その残虐性が全く薄いので、劇伴でかかる曲の優しさや、石鹸の中に野花を埋め込むことも“務め”であるとの強要とのギャップの広さが表現できずにいて、恐怖を演出できなかったのではないだろうか。もし、綺麗な演出にしたければ、人間石鹸なんて持ち出す必要があったのか、どうにもその脚本が腑に落ちないことしきりで消化不良である。
3つめは流石、出演者に手塚とおる、内田慈が参加しているだけあってストーリーに深みが増していた内容であった。やはり百戦錬磨の俳優が加われば画に深みが湧いてくるお手本のような形であろう。
ストーリーも、一番SF的であり、又昨今の事件(直近では渋谷区養護施設の刺殺事件)等も相俟って、社会一般がその因子を取り除けば良いんだという優生思想が蔓延りつつある状況へのアンチテーゼを薄味ながらも訴えるテーマ性を快く感じた。勿論、低予算の原因かと邪推するが、かなりぼやけた脳波測定の件は、もうすこし科学的根拠(トンデモ話でも可)で固めてくれると尚、リアリティが増してその後のヒューマンドラマに深い造影を彩るのだろうけど。とにかく、性急に物事を決めない、ゆっくり解決の糸口を探るという現代社会にすっぽり抜けて欠けてしまった思考を訴える作品としてかなり良く出来た内容であった。もっとストーリーを膨らませてくれれば有意義なテーマ性のある作品に化けるのではないだろうか。顔に痣のある少女が首相になる、そんな夢のある話があっても良いのではないかと、そのドラマ性の強さに将来性を感じた作品であった。