「凄味がある」凪待ち ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
凄味がある
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今まで白石監督の作品は4本鑑賞してますが、彼の作品は役者に演技力が伴わないと成立しない脚本、撮り方だと改めて実感しました。登場人物は過去をほとんど語らないので、表情や行動、仕草から彼らが今までどんな生き方をしてきたのかを観客が勝手に想像するしかないんですよね。
郁男はずっと底辺労働者で恐らく前科があるのではないでしょうか。亜弓の父親はそれを察してほっておけなくなった。転校した美波は放射能が原因で不登校になり、郁男は除染の仕事に行こうとする。震災後、原発事故の尻拭いは地元の人と日雇いが請け負っている。テレビは傷ついた人々よりもどうでもいい芸能人ゴシップを振りまき、東京はまるで震災の事は忘れてしまったかのようです。しかし、白石監督は決して私達に忘れさせません。そして日本に渦巻く負の感情と向き合いさせます。
口下手で器用に生きられない郁男の様な人間、東北の人々、この作品はこの国に住む全ての置き去りにされた人達の叫びを代弁しているようでした。彼らの叫びは薄っぺらいテレビの大音量では消すことが出来ないくらいに、凄味と重みがありました。
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