「殺人の要素がやや安易」凪待ち erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)
殺人の要素がやや安易
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『彼女がその名を知らない鳥たち』をつい先日ネットで観た際、とても良かったので急遽、この作品も観に行きました。また秀逸な演出と予想できない結末を香取慎吾という異色のキャスティングで観られるのかと思うと居ても立ってもいられず。
しかし『凶悪』を彷彿とさせる暗鬱なサスペンスかと思いきや、主軸は主人公の沈没と再生に置かれているとは思わなんだ。
そのせいか若干ストーリーに殺人事件の要素を持ち込んだのがやや安易に感じた。というのも、犯人のいかにもといった感じや、深く掘り下げられない動機などを鑑みるに、ただ「美波を消す為のいち要素」というような、歯車感、無理矢理感といった印象を受け、それが残念だった。
とはいえ、多くの人が感じたように俳優・香取慎吾の噂に違わぬ強烈な存在感、リアル感は素晴らしい。「陰」の役といえば遥か以前に『ドク』というドラマでベトナム人を演じた時くらいしか印象にないが、この一見して愛嬌たっぷりに見える男に演じさせると映えるんだなあ。闇を秘めた役柄が。
そして泥まみれにさせながらも微かな光明を宿命的に提示したラストは良かった。振り返ってみると用意周到に伏線を張りながら準備していたように思う。
極めつけは白石監督の独特かつ秀逸な演出、これらが絡み合ってつまらないはずはない。
それだけにあと一歩で最高の一作になったという気がして惜しかったなあ、と。
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