「【揺蕩(たゆた)う】」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【揺蕩(たゆた)う】
作中で数回使われる表現「揺蕩(たゆた)う」も、この作品の一つのテーマではないかと思う。
自分の気持ちを言葉にしたためるのは、そんなに簡単なことではない。
揺蕩う、つまり、揺れ動く心であれば、なおさらだ。
人の気持ちを慮(おもんばか)ることは出来ても、自分の気持ちと向き合うのは難しかったりもする。
ユリスは最後に、自分の言葉で大切な友人に感謝を伝えたではないか。
両親や弟への自分の気持ちに少しずつ向き合ううちに、自分自身で伝える大切さも理解できたのだ。
それは、ヴァイオレットも同じだろう。
揺蕩う自分の気持ちに向き合うことで、ギルベルトの揺蕩う気持を理解できたのかもしれない。
言葉は時に無力だ。
だが、言葉を尽くして、争いがなくなるような世界であれば良いと心から願う。
余談になるが、マイクロソフトが、Windows95を世に出した頃は、まだ、いろんなことがアナログで、ホテルの秘書サービスを利用することは多かった。
ニューヨーク国連本部の近くにあるUNプラザ・ホテルに宿泊した際、ある企業に履歴書を提出することになって、自己アピールも含めたカバーレターを書かなくてはならなくなった。
自分で文章を筆記して、それをホテルのコンシェルジュにタイピング・サービスをお願いしたところ、文法の直しや、より適切な単語のチョイスなどもしてくれた上で、素晴らしいカバーレターが返ってきたことを思い出した。
UNプラザは、国連が近いこともあって、当たり前だがインターナショナルな上、差別的なことを感じることなどもなく、様々な外国人をカバレッジすることを前提にした秘書サービスはプロフェッショナルそのもので、僕は好きなホテルだった。
今は、あんな秘書サービスも必要ないだろうなと思うと、ちょっと寂しい気がする。
Sincerely yours,