「好きだけど、それでも、どうしてもこの映画を★5にはできない。」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン Izumiさんの映画レビュー(感想・評価)
好きだけど、それでも、どうしてもこの映画を★5にはできない。
泣いたとも。ハンカチを握りしめたとも。
そもそも私は共感しすぎる上、涙腺が緩いから、初日は涙が止まらなかった。
でもなぜだろう、外伝の時は一枚絵のように美しいイメージがいくつも心に残ったけれど、今回はほとんどなかった。
2回は見てるんですが、それでも。
もちろん感じ入る所は多く、感動はした。
ただ、泣いていても、心と頭、感情と理性の結論が、「素晴らしい」で一致しない。そんな映画だった。特に映画としては、外伝の方がよほど完璧に近い形を呈していたように思う。テレビで2期として、もう少し尺のある形でやっていたなら、印象は違ったかもしれない。
賛美の声は溢れんばかりなので、私はひっかかったことだけ書きましょう。
あ、原作は未読ですので悪しからず。
まず超技術な義手や、超人ヴァイオレットの聴覚やら泳ぎやらは、まあもう今更ってことで、置いて、譲るとして。(ついでに泥ついたはずの白いドレスがやたらキレイだったり、高度すぎる花火技術やめちゃくちゃよく飛ぶ手紙も。アニメファンタジーなので。)それらをスルーしてもなお、少し疑問が残る。
・前後中に出てくる未来の話の入れ方
ちょっと長すぎないか…と、やや蛇足な気も。まずおばあちゃんの手紙と切り抜き見ただけで唐突にライデンに旅に出ちゃう流れでご都合感…それはいいとしても、そもそもこの子目線オンリーで未来を見せる必要とは…?家族と喧嘩して手紙書くっていう、何度目だ?なエピソード(劇中でも2回目)まで加える意味は…?喧嘩させなくても、普通に旅に出て手紙書いてもよかったような。ここにそんな尺とらず、各地それぞれの何気ないシーンを映す形で、未来を垣間見るスタイルとかでも良かったような…と、考えてしまったところです。
・メインと付帯エピソードのバランス
そこを取るとどうしても病気の子の話は薄くなる。わかる。でもそれなら、両親と弟への思いが、セリフではない画面から伝わるような画が欲しかった。本当なら、ヴァイオレットとのやりとりも、もっと欲しかった。
・やたらあざとい弟
いやあざとい。かわいいけど、喋り方??声かなり頑張って出したやつでは…?セリフの端々も見た目となんだかずれる。まあアニメじゃよくある感じ…なんですけど、不自然すぎて気になってしまったんですよね…。
・少佐からヴァイオレットへの好意
そもそも少佐はなぜそんなにもヴァイオレットを好きになって、保護すべき妹のようにではなく、愛したのか。とりあえずアニメだけだと少佐目線がいまいちわからないままで、劇中でもほんと少ししかなく。どうしてそんなにそばにいて欲しいのかが、察しはしたけど納得に至らず疑問でした。
・挿入歌(※超個人的感想です)
個人的に「みちしるべ」は、曲と歌い手の相性が悪いと思っています。今回は曲がかかるシーンに対して、声が雰囲気に合わず壊してしまっている。基本的に茅原さんの声は好きじゃないんですが、それでも外伝のEDは良かった。曲自体はいい。歌詞からしてもここでこの曲がかかるのは分かる。でもその音じゃない、その声じゃない。
・EDがあんまり盛り上がらない案件
WILL、作品の終幕にかかるにしては…歌詞がどうにも話の表層を撫でているような薄さ(に感じられる)…だし、「帰ろうか帰ろうよ」をサビの入りに持ってきたせいでいつか流行った木山さんのHOME思い出す。言いたいことは…分かるんだ……分かるけど。ヴァイオレット目線なら、もっと「愛してる」を知った故の積年の思いを綴って欲しかった。最後、少佐に「愛してる」とひとこと言うことすらできないほどに泣いた彼女の、それほどに育っていた想いを、EDで流してくれたら。どんなに感動しただろうか。メロディ自体も、なんか日本語向きじゃないような、日本語で歌ったらダサくなったみたいな感じがある。と思ったら、サントラ担当のEvanさんだし英語版、あるんですね……いやもうこれ英語版で良かったんじゃ……?日本語なら外伝EDと同じ作曲家さんで、切なみと盛り上がりのある曲をいただきたかったなあと。
色々書きましたが、概ねは満足してるんです。
無事上映にこぎ着けられたことだけでも、大変ありがたい。多くの方の尽力があってこそでしょう。見られて本当に良かった。
ただやはり、純粋に作品への感想だけだと、褒めちぎることはできない映画でした。