「いやギルベルトよ、、」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン ザルソバ星人さんの映画レビュー(感想・評価)
いやギルベルトよ、、
私はずっと社長のホッジンズに感情移入していた。本当にギルベルトはぶん殴ってやりたいし、観終わった今でもぶん殴ってやりたい。同じ男として許せない。
ギルベルトは生きているのか、生きているとしたらなぜヴァイオレットに会いにこないのか、それが物語を引っ張ってきた。だからこそ、すごくモヤモヤしている。正直、ギルベルトは記憶喪失で戦前のことをすべて忘れていたとか実は敵国で監禁されていた、くらいでよかった。いくらなんでもナヨナヨし過ぎだろうギルベルト。。彼女を傷つけてしまったからこそ、ちゃんと責任をとれよ。
すべてから逃げることを選んだギルベルトの気持ちをちゃんと想像するべきなのだろうが、私にはうまく想像できない。なんというか擁護する気になれない。むしろ、ギルベルトのもとへと船から飛び降りていったヴァイオレットの後姿を、ホッジンズはどんな気持ちで見ていたのだろうと深く考えてしまう。
ギルベルトは本当にヴァイオレットのことを愛しているのだろうか。愛してる女性の身元を引き取り、居場所と仕事を与えてくれた友に礼の一言もないのだろうか。自分とは一緒にいないほうがいいんだ、ってそれはないよギルベルト。君の行動は自己愛に満ちたセンチメンタルに浸っているようにしかみえない。爺さんの言った通り、傷ついたのは皆なんだよ。怪我や病気で自分の力だけでは生きていけない人もたくさんいるだろうし。島の先生としてはちゃんとやってるのだから、深刻な鬱病とかではないのだろう?
結果的にヴァイオレットが幸せになってくれたからこれ以上のことはないのだが、いなくなってしまってとても寂しい。私は最後まで社長と同じ気持ちだった。ヴァイオレットのことが本当に一人の人間として好きだったからだろうと思う。
その後も彼女は島で幸せに暮らしたみたいだし、もう何も言えない。よかったとしか言いようがない。だが、綺麗に完結したはずなのになんだか私は煮え切らない。「愛してる」がよくわからなくなったからだろうか。私がギルベルトを許せないからだろうか。許せたときに、愛を知るのだろうか。って、そんな着地もなあ。。
ラストシーンで闇の中を歩いてゆくヴァイオレットは、私が好きだった物語が遠くに歩いて行ってしまうようだった。なんだろうこの後味は。テレビ版や外伝を観た時のような幸福感がないというか。テレビ版の一番ラストのファジーな感じ、好きだったな。
ヴァイオレットは今まで狂言回し的な役目でもあったから、完結編の本作こそヴァイオレット自身の葛藤がもっと見たかった。
それでも、すごく素晴らしい作品だった。とても美しいアニメーションでした。文句言ってごめんなさい。