「アメリカとメキシコ、どちらにいるのかわからなくなる・・・」ボーダーライン ソルジャーズ・デイ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカとメキシコ、どちらにいるのかわからなくなる・・・
前作のヴィルヌーヴ監督とは打って変わって、映像の鮮やかさが全くなくなり、普通の暗い麻薬サスペンスとなった感がある。そもそもシカリオ(暗殺者)をメインにしない視点が面白かったはずなのに、今作では誰の視点で物語が進んでるのかさえわからなくしている。基本はジョシュ・ブローリンとベニチオ・デル・トロであるのは当然なのだが・・・。そんな中で無慈悲な鬼のような性格を持った指揮官の一人、キャサリン・キーナーが憎たらしいほどの存在感だった。
カルテルを混乱させるための拉致という作戦は面白く、主犯はギャングだと思わせるためにDEAが助けに入るという偽装工作までやってのける。それでも逃亡の途中でイサベラはアレハンドロの素性に気付いたみたいし、意味がなかった気がする。
意味がないといえば、そもそも麻薬カルテルが絡んだテロではなく、アメリカ市民による犯行だったことが判明した時点で政府の行った作戦への皮肉が込められていた。ブッシュによってイラク大量兵器に関する一連の戦争など、国民に嘘をついて戦争を始め、都合の悪いことは隠蔽工作で片づける。現代でも政治家やそれを支持する人間によって平然と行われていることも憂慮すべき風潮だ。そこまでのメッセージを込めたのかどうかは知りませんが(ちょっと深読み)。
そうした風刺や皮肉は感じられる映画ではあったが、ストーリー自体はもっと工夫が必要だと感じたし、手話までできるベニチオ・デル・トロのカッコよさを打ち出すのであれば、もうちょっと彼の目線が欲しかった。前作で復讐を果たしたはずなのに・・・とかの疑問もあったし、ラストで自分を撃った少年をシカリオに育てるつもりなのか、脅すだけのつもりなのかよくわからなかったが、続編に期待しろってことかな・・・